キログラムが変わる? - 真空技術は、質量の新たな定義において重要な役割を果たしています。

キログラムが変わる? - 真空技術は、質量の新たな定義において重要な役割を果たしています。

基本的な7つの単位の中で、今でも実際に存在する物体に基づいているのは「キログラム」だけです。その物体とは、パリに保管されている国際キログラム原器(IPK)です。しかしこの質量も自然定数に基づく新たな定義を設けることが決議されました。この変更に必要となる極めて重要な手順は、真空下で実施されます。
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テニスボールほどの大きさの、ほぼ完璧な銀色の球体。その結晶球体がまもなく、パリにあるIPKのプラチナイリジウム合金の円柱に取って代わるかもしれません。科学者らは、それを高純度のケイ素で作成しました。その重さは、IPKとまったく同じです。

真空下では軽くなる

ケイ素球体の質量をキログラム原器と比較するために、これらの物体の重量を、大気圧下と真空下の両方で計測しました。真空下での計測は、空気の浮力と対流の影響を受けないため、大気圧下で行われるような測定結果のばらつきが生じません。大気圧下では空気中の微小な粒子が物体の表面に堆積するため、真空下のほうがわずかに軽くなります。結晶球体の重さを量る場合、実際にこれらの粒子による平均の誤差は10マイクログラム程度となる可能性があります。

キログラムを定義するための普遍的な公式を作成するために、物理学者らは、球体内のケイ素原子の数を判定しなければなりません。この判定には完璧な結晶構造と極めて精度の高い球体が必要で、かつ非常に高い精度の計算も求められます。研究者は、原子1億個につき、最大で1個の数え間違いしか許されません。実験が成功すれば、自然定数、つまりケイ素の原子量をキログラムの基準とすることができるようになります。

真空により純度を確保

原子の数を正確に判定するには、極めて純度の高いケイ素が必要となります。この完璧な品質を確保するために、真空内でケイ素の単結晶固体を育成します。まず精製された均質なケイ素を結晶育成炉で、融点の数度上の温度まで加熱して融解します。次に種晶と呼ばれる、極めて純度の高い小さな単結晶を、その融解物に浸します。融解したケイ素が種晶の表面で凝固していくのですが、その過程で規則正しい格子構造が構築されていきます。これをゆっくりと回転し上昇させると、円柱状の結晶柱が形成されます。ケイ素の球体はここから切り出されます。

このようにして製造され、さらに磨き上げられた球体は、ほぼ完璧な形状となります。この球体の直径は、どの場所で測っても誤差は100ナノメートル以下です。この球体を地球の大きさに例えると、地表面には5メートルを超える丘陵が存在しないということになります。

2年にわたる計測

正確な体積を判定するためには、このケイ素球体の表面上の約100万個の点で、正確な光学的計測の実施が必要となります。そこで結晶格子内の個々の原子間距離を、X線干渉計を使用して測定します。このデータを取得すると、その体積に入る原子の数を理論的に計算できるようになります。

ケイ素球体の内部は規則正しい結晶の格子で構成されているため、表面は二酸化ケイ素が堆積します。これは球体の質量と体積に影響するため、物理学者らはその厚みも正確に判定し、考慮する必要があります。そのあと球体は、X線蛍光分光法と光電子分光法の組み合わせを利用して分析されます。この分析も真空下で行われます。光子と電子が空気の粒子に吸着されず、何にも阻害されずに検出器まで届くよう、球体は、約10-8ミリバールの超高真空システム内で分析されます。

研究者らは、この結晶球体測定に2年を要するという計画を立てています。約130年間使われ続けてきたIPKは、2018年秋にもこの結晶球体と交換されるかもしれません。

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今やほとんどの測定単位は不変の自然定数による公式で定義されています。たとえば、メートルは、真空において光が299,792,458分の1秒間に進む距離として定義されています。この秒数は、セシウム原子が9,192,631,770回振動する時間です。

IPKは徐々に軽くなる

一方で、キログラムは、現在では唯一、実際の質量、つまりIPKに基づく単位となっています。そのためこの原器が損傷したり紛失したりすれば、代わりがないという問題点があります。またこのプラチナイリジウム合金の円柱であるIPKは年を経るごとに徐々に軽くなっており、現在は作成時よりも約50マイクログラム軽くなっています。これは世界中の計測機関に配布されたコピーと比較することによって発見されました。質量が失われた理由についてはまだ結論が出ていませんが、考えられる1つの原因として、清掃手法が挙げられています。自然定数に基づく質量の新たな定義があれば、この種の問題は発生せず、いつでも必要な時に1キログラムの正確な基準質量を再現できるようになります。


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