焼き立て食感が続くパンの秘密は真空冷却 - 真空冷却により迅速な加工と賞味期限の延長を実現

焼き立て食感が続くパンの秘密は真空冷却 - 真空冷却により迅速な加工と賞味期限の延長を実現

従来、食品の冷却は外側から作用するため内側まで冷やすには時間がかかりました。真空冷却では、冷却が食品の内側でも作用するため、大幅なスピードアップが実現。加工時間が短縮されるだけでなく、ペーストリー生地や野菜が長期間新鮮なまま保たれます。
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ガスライターの充填をしたことがある人ならば、冷却のしくみがどのようなものかお分かりいただけるでしょう。ガスカートリッジの充填口をライターから外すと、シューっという音がして小量の液体ガスが漏れ、蒸発します。それにより、周辺の金属や、場合によってはガスを充填する人の指先まで、一瞬氷点下の温度にまで冷やされます。食品業界で利用されている私たちの冷蔵庫や冷蔵保存室も、これと同じ原理、つまり気化熱を利用しています。冷却装置の中では、ガス状の冷媒がまずコンプレッサーで加圧され、液体となります。通常の大気圧下では、冷媒は再度蒸発し、冷蔵庫内から熱を奪います。冷蔵庫内に入れた物は、時間をかけて冷蔵庫内の温度まで冷却されますが、まず冷却する物の表面から温度が下がり、物の内側は、ゆっくりしか冷却されません。

冷却する物の内側へも直接作用

一方、真空冷却も液体の気化熱を利用するのは同じですが、このプロセスが機械の冷却装置内で行われるのではなく、冷却する物の内部で直接行われているのが大きな違いです。この場合、熱を奪う液体は、水分を含む食品に含まれる水そのものです。一般的に知られるように、沸点は周辺気圧によって左右されます。平地における「通常の大気圧」である1,013ミリバールの環境では、沸点は100℃となります。気圧が下がると沸点も下がるのですが、これが30ミリバールでは沸点は約25℃、10ミリバールでは約6℃で蒸発が起こります。したがって、ある程度の水分含有量のある食品を真空チャンバーに入れると、熱を加えなくても食品内の水分が沸騰状態となります。真空は食品の内側にも作用するため、蒸発により、冷却する物から大量の熱が一気に除去されます。

この効果は多くのパン工場で焼きたての製品を早く冷ますのに利用されています。通常なら1時間半ほどかかる冷却工程が、真空チャンバーでは数分で終わります。焼き上げ工程で仕上がった製品は、その後すぐに真空チャンバーに送られます。ドアを閉めると、チャンバー内の圧力は30~50ミリバールまで下がります。そうするとパンやケーキは通常3分程で約30度の適温に冷やされます。そのためチャンバーから取り出してすぐに食べることもできますし、さらに加工することもできます。また真空は、冷凍食品の製造にも役立ちます。ショックフロスティングと呼ばれている従来の手法と比較すると、必要なエネルギーはごくわずかで済みます。

節約と品質向上

省エネと時間短縮によって大きく向上するのは、パン工場の冷却工程だけではありません。焼き上げの前工程で真空を利用すると、デンプンの膨らみや小麦粉に含まれるタンパク質の好ましい変化がよりスムーズに進みます。このため、焼き上げ時間も短くて済むようになります。さらに真空の効果で余分な水分が蒸発するので、パンの皮も中の柔らかい部分も完璧な食感に仕上がります。焼き上がった製品は大きくふっくら仕上がるだけでなく、より長時間にわたって新鮮さと歯ざわりが保たれます。多くの国では、サクサク感と硬い皮の部分が、優れた品質の特徴だと考えられています。しかし、柔らかめの皮が好まれる場合でも、同じように真空は効果を発揮します。真空レベルと冷却時間を正確にコントロールすることで、適正な水分量のみを蒸発させ、乾燥を防いで適度な硬さのパンを作ることができます。

このような理由から、真空冷却はレタスなどの野菜や花にも利用されています。ここでも、冷却工程のスピードが決め手となります。大型の真空チャンバーでは、収穫したばかりのトラック一杯分の野菜を入れて、25分程で畑の温度から約4度にまで冷却することができます。従来型の冷却と比較した場合、大幅な省エネ、内部までの迅速な冷却、さらに賞味期限の大幅な延長という効果もあります。

ブッシュのドライ式COBRAスクリュー式真空ポンプは、ベーカリー製品や野菜、果物の真空冷却用途で高い評価を得ています。


通常の条件下では、固体(固相)、液体(液相)、気体(気相)という3つの「相」がよく知られています。冷却の場合、特に液相と気相が関係してきます。これは液相から気相へ移るために必要な熱の量によるものです。たとえば、1リットルの水の温度を1℃上げるには、約4キロジュール(kJ)が必要です。同じ量の水を沸騰させ気相にするには、すでに100度に達している状態からでも、2,088 kJが必要となります。

真空下のように気圧が低いと水はより低い温度で沸騰しますが、相転移に必要なエネルギーは変わりません。そのため、水が25℃(圧力30ミリバール)ですでに蒸発するとすれば、焼きたての商品やレタスからは、通常の圧力下で水が沸騰するときと同じ量の熱が奪われます。物理学では、「冷たい」というのは「より温かくない」という意味であるため、この熱が奪われることによってより強力で迅速な冷却が得られます。


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