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図1:スクリュー真空ポンプとメカニカルブースターポンプを搭載した真空システムは、多くの産業用カンナビノイド抽出プロセス向けに最適な真空発生器です。出典:Busch Vacuum Solutions.

カンナビノイドの抽出における真空テクノロジー

医療用のカンナビノイド

医薬品としての大麻草の使用は、多くの国で救済措置として容認された後、大幅に増加しています。カンナビノイドは、特に重要な医療用成分です。主な生理活性物質であるカンナビジオール(CBD)とテトラヒドロカンナビノール(THC)は、主に医学的観点から需要があります。大麻から高品質のCBDとTHCを抽出する産業プロセスで、真空テクノロジーは重要な役割を果たしています。具体的には乾燥、抽出、蒸発、蒸留の工程で真空が利用されます。真空テクノロジーだけでも、大麻草の成分の中からこれらの純粋な有効成分を効果的かつ効率的に抽出することができます。

大麻草には、さまざまなカンナビノイド、テルペン、フラボノイド、およびその他の物質が含まれています。精神活性物質であるカンナビノイド、THCは、アレルギー、疼痛治療、不安および摂食障害の治療、あるいはがん治療にも使用されます。カンナビノイド、CBDは、神経系反応を促進し、鎮痛および抗炎症効果があります。CBDは食品や化粧品にも使用されます。これら2つの有効成分に加えて、大麻からは、飽和脂肪酸、ベータカロテン、オメガ3脂肪酸、ビタミンEなども得ることができます。

生理活性成分であるTHCとCBDは、さまざまなプロセスを経て抽出されます(図2)。これらの活性成分を最も効果的かつ効率的に製造できるように、プロセスの一部は真空下で行われます。それぞれのプロセスを説明します。

フリーズドライ

フリーズドライは、収穫された産業用大麻草の乾燥工程で一般的に利用されています。この工程では、80%が水分の植物や植物の一部を、素早く、しかも穏やかに乾燥させることができます。フリーズドライは、昇華と呼ばれる物理的なプロセスに基づいています。水は真空下で凍結状態の固体から気体へと変化します。つまり、氷が蒸発するのです。大麻草またはその一部は、まず通常の圧力で急速冷凍されます。その後、真空下に置くことで凍結した水分が製品から昇華し気化します。この方法なら、水を加熱せずにベーパーとして吸引することができます。つまり、高温や長時間かかる乾燥プロセスで成分が悪影響を受けることがありません。真空テクノロジーを正しく活用することが、この乾燥プロセスにおいて重要です。通常、植物に応じ、フリーズドライには0.001~0.5 hPa(mbar)の絶対圧力が使用されます。

別の乾燥方法として、マイクロ波を利用した乾燥もあります。この手法もフリーズドライと同様に迅速です。圧力レベルは、10~400 hPa(mbar)という低真空域です。

抽出

抽出工程で、乾燥した植物の一部(いわゆるバイオマス)から大麻油を得ることができます。大麻油は、大麻草からの抽出物であり、未処理の状態でさまざまなカンナビノイドを含んでいます。最も需要の高いものがCBDとTHCであり、60%~80%を占めています。さらに、大麻油には、エッセンシャルオイル(テルペン)、フラボノイド、脂質、ワックス、グリースが含まれています。抽出した油の組成は、植物自体、または使用される部分、抽出方法、温度、圧力条件、時間などのパラメーターにより異なります。大麻から油を抽出する方法として、当初は炭化水素抽出法と二酸化炭素抽出法が一般的でしたが、いずれの抽出法もその後の脱ろう処理が必要です。抽出した油をエタノールと混ぜ、摂氏-40度まで冷やし冷却ろ過を行います。この方法で油からワックスとグリースが除去されます。

エタノール抽出

現在、エタノール抽出が、産業用大麻の加工プロセスにおいて確立された方法となっています。これは、炭化水素抽出の優れた効率性と、二酸化炭素抽出による高い安全性を兼ね備えた手法です。脱ろうの必要もありません。エタノールは、不要な物質をバイオマスから抽出する目的でも非常に効果的な溶媒です。抽出は過冷却(極低温)エタノールを使用して、絶対圧力0.001~1 hPa(mbar)という真空下で行われます(図3)。このようにして、望ましい性質の抽出物が得られます。

抽出の中間生成物は、常に大麻油とエタノールの混合物です。

真空蒸発


次に、大麻油/エタノールの混合物を蒸発プロセスに移し、そこで含まれるエタノールを除去します。エタノールの沸点が低いことから、室温または適度な加熱により、50~100 hPa(mbar)の低真空のロータリーエバポレーターを使用し、研究室または試験的規模のプロセスでこれを実行することができます。エタノールを封液として使用した水封式真空ポンプをこの用途に使用することが可能です。抽出したエタノールは、コンデンサーを介して再度液化しサイクルに戻すことができます。産業規模の運用では、薄膜式エバポレーターまたはワイプフィルムエバポレーターを使用して、より高い真空レベルでの作業により、溶媒の大部分を効率的に除去し油を抽出することができます。真空蒸発後、THC/CBDの濃度60~80%の原油が得られます。

蒸留


大麻の原油には、カンナビノイドの他に、芳香を持つテルペン類、生理調節機能に働きかけるフラボノイド類が含まれています。蒸留プロセスでこれらを分離する必要があります。 最も一般的かつ効率的な蒸留プロセスの1つが、いわゆるショートパス蒸留です。ここでは、オイルの成分の沸点がそれぞれ異なるという点を利用し、特定の温度と圧力の下で分離を行います。THCは、大気圧下で摂氏157度で蒸発し始めますが、CBDの蒸発温度は摂氏160~180度です。テルペンおよびフラボノイドの沸点はこれよりも低い温度です。真空下で蒸留を実施することで、各種カンナビノイドの沸点を下げることができます。ショートパス蒸留は、0.001~1 hPa(mbar)の真空レベルで機能します(図3)。オイルをゆっくりと加熱し、真空レベルを調整してテルペンとフラボノイドを選択的に蒸発させ、それを凝縮し回収します。ここで濃縮物として残るのが、純度99%のカンナビノイドTHCおよびCBDを含む液体です。第2の蒸留ステップでは、THCを薄膜式エバポレーターでCBDから分離します。薄膜式エバポレーターはショートパス蒸留と同様に、真空と温度差を利用します。原則として、蒸留は1 hPa(mbar)程度の低真空と、高温を利用して行われます。THCの精神作用を発揮させるには、このカンナビノイドを104°Cに加熱する必要があります。これは脱カルボキシル化と呼ばれるプロセスです。蒸留中にこの温度に達しない場合、蒸留前の中間段階で脱炭酸処理を実施する必要があります。この最後の工程で、ようようやく純粋なCBDとTHCが得られ、有効成分としてさまざまな用途向けに加工できるようになります。CBDとTHCの抽出方法はさまざまであり、特に大麻の種類や処理量によって異なります。そのため、使用する真空テクノロジー、達成可能な到達真空度または排気速度などの真空ポンプの技術的パラメーターも、それぞれのプロセスに合わせて調整する必要があります。真空ポンプを組み合わせることが経済的、技術的なメリットをもたらす場合もあります。例えばプロセスの加速や、熱に弱い成分の高温からの保護できるといった効果です。優れた真空供給の選択には、真空のスペシャリストにご相談いただくことが不可欠です。Busch Vacuum Solutionsは、あらゆるアプリケーション向けに幅広い真空ポンプと真空システムを提供しています。Buschは世界各地に拠点を展開しています。いつでもBuschの真空スペシャリストがお客様に合わせた包括的なアドバイスをお届けいたします。図4の表に、どの真空テクノロジーをご利用いただけるかの目安が掲載されています。