木材加工における真空 - パート4
この記事が、「木材加工における真空」シリーズの最終回です。今回はプラント全体の真空供給の集中化を中心に取り上げます。複数の機械で
真空クランプを使っている場合、真空供給の集中化が賢明な選択肢となり得ます。集中化には、まず各工作機械に直接接続されている真空ポンプを取り外します。その後、配管網を使用して工作機械を真空システムに接続します。真空システムは、製造エリアの外にある別室に配置することができます。
集中真空システム(図1)が木材加工プラントにとって合理的な選択肢であるかは、さまざまな要因から判断します:
- 使用されている真空ポンプの台数
- 工作機械と真空ポンプの稼働時間
- スペースの条件
工作機械毎に真空ポンプを配置する分散真空生成と比較した際の集中真空システムのメリットは次の通りです:
- 最高レベルのエネルギー効率
- 最高レベルの信頼性
- メンテナンス中の機械ダウンタイムがない
- 排熱の効果的な利用
重要な考慮事項
工作機械を購入すると、通常は1台、あるいは加工テーブルが2台の場合は2台の真空ポンプが付属しています。これらの真空ポンプはデマンドの上限に応えるよう設計されており、通常は性能に余裕をもたせてあります。使用する材料、ワーク、加工時間によっては、このタイプの真空ポンプでは大きすぎる場合があります。たとえば、プラントに複数の機械と計15台の真空ポンプがあり、1日24時間稼働する場合、プラントの真空供給にかかるエネルギー消費量だけでも相当なものになります。例
:各5.5 kWの真空ポンプが15台稼働すると、24時間運転で消費されるエネルギーは1,980kWhとなります。電力価格を0.10ユーロ/kWhとすれば、1日あたりのエネルギーコストは約200ユーロです。これで年間220日営業する場合、年間の電力コストは43,560ユーロとなります。真空が必要とされる実際のクランプ時間は、この稼働時間のほんの一部に過ぎません。つまり、真空ポンプが稼働していても、使用されていないことが多いということです。ドライ式ロータリーベーン真空ポンプなど、徹底したメンテナンスを要する真空ポンプでは、このような状況によってベーン交換のメンテナンス間隔が短くなり、運用コストがかさみます。この運用コストは、必要な時だけ真空ポンプを稼働することで回避できます。
真空供給の集中化
多くの場合、集中真空システムでは、分散型の真空生成に比べて真空ポンプの数を半減させることができます。
集中化する場合、個々の工作機械に真空ポンプを設置する必要はありません。工作機械は、配管網を通じて集中真空システムに接続されます。真空システムを設計してみれば、真空ポンプを大幅に減らすことができるということは明らかです。多くの場合、分散型の真空生成と比較して、真空ポンプの数を半減させることができます。
省エネルギー
集中真空システムは、単純に真空ポンプの数が少ないため、各工作機械に真空ポンプを設置するよりも
はるかにエネルギー効率の高い運用が可能です。
真空システムの性能は、実際の需要に合わせて調整されます。
このような真空システムの制御システムは、その時点で必要とされる排気速度または真空レベルを維持するために必要な台数だけ真空ポンプを起動します。つまり、真空システムのパフォーマンスを実際の需要に合わせて調整するということです。さらに、真空ポンプは交互に運転されるため、すべての真空ポンプの稼働時間がほぼ均等となります。真空システムから工作機械までの配管網は真空のバッファタンクの役割を果たします。常に排気された状態だということです。ここでのメリットは、クランプ装置のバルブを開くとすぐにクランプに必要な真空が供給されるという点です。集中真空システムは、一般的に真空ポンプの台数が少なくすむにもかかわらず、そのすべてが常時稼動するわけではないと、これまでの実績から照明されています。これによってさらなる省エネが可能です。通常は、このような真空システムには
MINKクロー真空ポンプが組み込まれています。この真空ポンプには
周波数制御モーターを搭載できるため、パフォーマンスをさらにこ細かく調整することが可能です。この点もまた省エネに貢献します。
信頼性
真空供給の集中化で、最高レベルの信頼性が確保されます。真空ポンプが1台故障したとしても、残りの真空ポンプがその分出力を増やすため、加工プロセスには全く影響がありません。リークが大きくなっても、この方法で対応できます。
メンテナンス
MINKクロー真空ポンプは、ほぼメンテナンスフリーです。ギアオイルは生産を止めずに交換できます。エンジニアが生産現場に立ち入る必要はありません。真空システムの真空ポンプを1台停止し、ギアオイルを交換すればよいのです。の際、真空システムの性能が損なわれることはありません。
排熱の活用
すべての真空発生器を1つの部屋に集中させることにより、真空ポンプからの排熱が利用しやすくなります。具体的には、排気を暖房や温水システムに供給したり、熱交換器を使用して熱エネルギーを変換することで熱を活用します。どのような方法が最も効果的かは、それぞれの現場の条件により異なります。
まとめ
真空供給の集中化には、基本事項をいくつか検討する必要があります。エネルギーコストあるいは一般的な運用コストの削減は、場合によっては劇的な成果となりますが、投資コストと併せて検討しなければなりません。既存のMINKクロー真空ポンプがあれば、それを統合することで集中真空システムのコストを削減することができます。配管網に関しては、立地条件と建設条件が極めて重要なコスト要因になります。この場合も重要なのは、技術的に適切かつ経済的なソリューションは、真空の専門家のサポートを得てこそ実現できるという点です。Busch Vacuum Solutionsは、長年に渡り、世界各地で集中真空システムの実績と経験を積んでいます。