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軽量列車向けの軽やかな運転

真空で走る鉄道

自転車を除けば、どの輸送手段も、それ自体が運ぶ荷物よりも重いと言えます。もしそこを覆せれば、そこにかかるエネルギーをより効率的に活用できるようになるでしょう。真空ポンプによって駆動される大気圧鉄道は、まさにこれに該当します。

現在、車1台の重量は、コンパクトカーであっても1トン近くあります。車に乗るのが2人だとして、車そのものの移動に消費されるエネルギーは90%近くです。乗客による消費はわずか10%強を占めるにすぎません。貨物を満載しても積載重量と車両重量の比が1:4を超えることはめったにありません。飛行機でも同様に状況は好ましくありません。鉄道はさらに悪い状況です。

駆動装置を省く

従来の車両で最も重い部品の 1 つは、常に駆動部です。自転車が唯一高い効率を達成できるのは、乗客自身が駆動源としても機能するためです。しかし、モーターなどの駆動部を車両に搭載する必要が本当にあるのでしょうか?どこかに駆動源を設置し、その力を車両に伝達する方が効率がよいと考えられます。これは、1世紀前のエンジニアが考案したアイデアです。最初の大気圧鉄道の路線は、1840年代にアイルランドとイングランドに建設されました。

基本的な考え方はシンプルです。レールの間にパイプを敷設し、その上部にスロット(切れ込み)を設け、柔軟性のあるフラップで密閉します。パイプ内部には、パイプ口径に合うピストンが挿入されています。これを、パイプのスロットを通して車両下部に固定します。ここで真空ポンプを使い、ピストンの前方を減圧します。減圧によってピストンが引かれると、ピストンに固定された車両も引かれます。コンプレッサーを使い、後方から加圧で補助することも可能です。

二度目の試みで成功

19世紀には、パイプのスロットを十分に密閉し、真空ポンプを効率的に動作させるために必要な材料と技術はまだ到達していませんでした。技術の発展で、今ではこれらの問題が解消されています。ブラジルのエンジニア、Oskar Coesterは、1970年代に空気推進車両、「Aeromovel」の開発に成功しました。この輸送システムは、19世紀の大気圧鉄道と同じ原理で動くものです。

近代化された今回のバージョンでは、丸の代わりに長方形のパイプラインが敷かれ、内側にはピストンではなく、同じく長方形のプレートがあり、取り付けられた車両に推進力を伝えます。ポンプの力が、車輌前方の真空と後方の過圧の両方に使われます。1980年、ハノーバー見本市でテスト車両を運転。Aeromovels は現在、インドネシアのテーマパークで 3.2 キロメートルの円形鉄道と、ブラジルのポルト・アレグレの空港で 1000 メートルの鉄道を運用しています。今後もまだ設置計画があります。積載重量と車両重量の比を1:1にすることは通常の鉄道では驚異的なことですが、Aeromovelなら満員の場合でも不可能ではありません。
大気圧鉄道の最初のチャレンジは、なぜ失敗に終わったのでしょうか?

自重に加えて大量の石炭を運ばなければならなかった蒸気機関車にとって代わる技術としては、早い段階から疑問の声が上がっていました。ロンドンとクロイドンを結ぶ路線で、この大気圧鉄道は、1845年に時速160キロメートルという最高速度を記録しています。蒸気機関車がこの速度を超えるには、それから約60年もかかりました。にもかかわらず、ほとんどの大気圧鉄道路線の運行は、その後間もなく停止されました。

パイプスロットの密閉性の弱さが、決定的な弱点でした。スロットを密閉する目的のフラップには通常、牡牛の皮を石けんやタラ肝油などの物質で潤滑したものが使われていました。しかし、皮は凍ると固くなり、脆くなりました。さらに、使用されている潤滑剤にネズミが集まり、フラップを噛みちぎるという被害もありました。列車の運行状況を知らせる通信技術もなかったため、決められたスケジュールで真空ポンプを蒸気エンジンで作動させていました。そもそも効率の悪い蒸気エンジンでしたが、列車に遅れが生じると更に無駄な石炭が消費されることになりました。一部の列車では、始動や、プラットフォームの停車位置できっちり停止することが難しい場合もありました。このようなデメリットが重なったことと、蒸気機関車の進歩により、有望なこの技術は一旦終わりを迎えることになったのです。