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出典:funebre - istockphoto.com

木材加工における真空 - パート2

前回は、真空テクノロジーの基本的な側面を取り上げましたが、今回は真空生成のさまざまな種類について話したいと思います。その中で特に重要なのは、工作機械の真空クランプに関する話題です。家具業界やその他の木材加工業界における自動化の進展に伴い、重要性はこれまで以上に増しています。経済性も同じく重要性を増しています。それが製造や技術の責任者の注目をますます集めるものとなっています。真空生成にはいくつかの方法があります。真空クランプには、さまざまな真空ポンプを使用できます。では、詳しく見ていきましょう。

オイル潤滑ロータリーベーン真空ポンプ


オイル潤滑ロータリーベーン真空ポンプは、工作機械のクランプに使用される昔ながらのタイプの真空ポンプです。数十年前は、もっぱらこのタイプの真空ポンプが利用されていました。信頼性、堅牢性、1 hPa(mbar)未満という低い到達真空度を特徴としています。これは99.9%の真空レベルに相当します。この真空レベルなら、排気速度の余力が十分確保されます。迅速で安全なクランプ向けとして定評があります。圧縮チャンバーへのオイルの供給が高真空レベルを実現します。オイルは内部循環システムを通って真空ポンプに送られ、そこでシール、潤滑、および圧縮熱除去の役割を果たします。オイルとオイルフィルターは、2,000稼働時間ごとに交換する必要があります。排気速度が160 m3/hを超える工作機械では、このタイプの真空ポンプに代わりドライ真空テクノロジーが使われるようになってきています。低い排気速度で処理できる小型の工作機械やクランプ装置なら、今でもオイル潤滑ロータリーベーン真空ポンプが経済性と信頼性を発揮しています。

水封式真空ポンプ


水封式真空ポンプは、水を封液として使い真空を生成する、古い原理で動作します。しかし、水を封液として利用すると、毎日水を補充したり給水回路を定期的に洗浄したりといったメンテナンスの手間がかかることから、真空クランプ用としてほとんど使い物になりませんでした。このタイプの真空ポンプの真空レベルは水温に左右されます。水温が上昇すると、到達真空度が低下し、排気速度も低下します。最大排気速度に達するのは、水温が15°Cまでです。水温が40°Cになると、排気速度は本来の性能の40%まで低下します。水封式真空テクノロジーの主なメリットは、水蒸気や湿気に対する高い適応性です。これは工作機械のクランプでは役立ちませんが、木材の乾燥と含浸には理想的な適合性を示します。

ドライ式ロータリーベーン真空ポンプ


作動液なしで動作するロータリーベーン真空ポンプは、吸引した空気を圧縮するのにオイルも水も必要としません。そのため「ドライ式」と呼ばれます。このタイプの真空ポンプは、投資コストが比較的低いため、真空クランプに使われるケースが非常に多くなっています。動作原理(図1)はオイル潤滑ロータリーベーン真空ポンプと同じです。
ただし、オイル潤滑がないため、カーボングラファイト製のいわゆる「自己潤滑」のベーンまたはブレードが使用されます。これには摩耗の影響を受けるという欠点があり(図2)、ベーンの破損や故障を防ぐためには、定期的な交換が必要となります。ベーンの摩耗は、真空ポンプの性能にも影響します。わずか2,000時間の稼働時間で、ドライ式ロータリーベーン真空ポンプの排気速度は、本来の排気速度の85~90%になる可能性があります。ベーンの耐用年数に影響を与える要因の1つが、ワークの素材です。研磨性のあるMDFの粉塵は、ベーンの摩耗を加速させます。3交代制で稼働を続ける場合、ベーンを少なくとも半年ごとにチェックし、必要に応じて交換する必要があります。オペレーターは、これらの特殊なベーンの調達コスト(過小評価してはなりません)を考慮するだけでなく、このタイプの真空ポンプのエネルギー消費量も慎重に検討する必要があります。他の真空テクノロジーと比較した場合、エネルギーコストはここの真空ポンプが最も高くなります。目安として、排気速度140m3/h以上のドライ式ロータリーベーン真空ポンプは、1時間あたり20%多くのエネルギーを必要とします。
ドライ式ロータリーベーン真空ポンプのメンテナンスとエネルギーにかかるコストを考慮すると、このタイプの真空ポンプで推奨される排気速度は100m3/hまでとなります。サイズが小さいほど圧縮チャンバーの直径が小さくなるため、ベーンの摩耗が遅くなります。ベーンの周速が低下し、各ベーンがロータースロット内を滑りながら出入りする際の移動距離を減少させます。

MINKクロー真空ポンプ


1990年代半ば、Busch Vacuum Solutionsはまったく新しい真空生成の原理を開発しました。それがMINKクロー真空テクノロジーです。開発以来絶えず改良を重ねてきたこのテクノロジーは、木材加工業界で広く使われています。 今では、この真空ポンプの第3世代が、すでにCNCルーターのリーディングカンパニーで採用されています。
MINKクロー真空ポンプはほぼメンテナンスフリーです。また、真空クランプ向けの真空生成で最もエネルギー効率に優れた動作原理です。
MINKクロー真空ポンプは、作動液なしで動作するため水やオイルは不要です。爪の形をした2本のローターがハウジング内で回転します(図3)。ローター同士、あるいはローターとハウジングが接触することはありません。つまり、摩擦がないため摩耗することもなく、ほぼメンテナンスフリーの真空生成が実現します。メンテナンス作業は、2年に1度ギアオイルを交換するだけです。吸引した空気の圧縮が非接触式なため、他の真空ポンプと比べて消費電力が格段に少ないという利点もあります。MINKクロー真空ポンプは、真空クランプ向けの真空生成で最もエネルギー効率に優れた動作原理です。
技術的な理由から、MINKクロー真空ポンプは、ここで取り上げた中では、デマンドに合わせた制御が可能な唯一の真空発生器です。つまり、真空ポンプに所定の到達圧力を設定することが可能です。設定値に達すると、速度が自動的に低下するか、真空ポンプそのものが停止します。これにより、さらなる省エネが実現します。このため、Buschは幅広いサイズのポンプ(40m3~900m3/h)の他に、省エネで周波数制御が可能なモーターオプションも用意しています。

まとめ


クランプ用の真空生成には、さまざまな選択肢があります。原則として、理想的な真空を選定するには、各条件を評価する必要があります。この図(図4)は、予備的な判断をする際に役立ちます。ただし通常は、ポンプ選定やサイズの決定に際して専門家にご相談いただくことをお勧めします。