南イタリアにあるCapua 1880社は、柑橘類から高品質のエッセンシャルオイルを製造することが主要な業務内容です。オイルは香水のトップノートや、食品用のフレーバーに使われています。果実の皮から油と水のエマルジョンを抽出した後、分離された原料オイルを蒸留プロセスによって精製します。これにより、他の成分による香りや色の影響を受けない、唯一無二の香りを持つ極めて純度の高いオイルが得られます。
Capua 1880は、蒸留プロセスにBusch Vacuum Solutionsの真空テクノロジーを利用しています。その蒸留プロセスは、果実の種類に応じて薄膜蒸発装置やショートパス蒸留装置で行われます。どの蒸留装置も作動流体が不要なCOBRAスクリュー真空ポンプのみが使用されています。速度制御機能を持った真空ポンプで、正確かつ確実に所定の真空レベルを保ちます。これが、蒸留温度と並び、製品の品質を向上させる鍵となります。
真空蒸留による高品質のエッセンシャルオイルおよびエッセンス
Capua 1880社について
Capua 1880社は1880年から柑橘類のエッセンスを製造しています。同社は、カラブリア州に2つの製造工場を構えています。この場所は世界最大のベルガモット栽培地の中にありますが、ベルガモットはレモンとビターオレンジの交配種で、エッセンシャルオイルの生産用に特別に品種改良されたものです。世界のベルガモットの生産高の96%以上がカラブリア州産であり、Capua 1880社はこの果実から作られる天然エッセンスの世界最大手のメーカーです。それ以外に、レモン、オレンジ、ブラッドオレンジ、マンダリンからのオイル抽出も行われています。Capua 1880社のReggio Calabria工場では10月から5月にかけて柑橘類を収穫し、加工しています。オイルの抽出方法は、すべての柑橘類に共通しています。
水分を含んだエッセンシャルオイルは、12の製造ラインで果皮から機械的に抽出されます。まず、下流の多段式遠心分離器で、このエマルジョンから残留固形物と水が分離されます。このようにして抽出された原料オイルが、Campo Calabro工場で年間を通じて精製され、常に同じ香りが得られるように、目的のレシピに従ってそれぞれの顧客のために混合されます。
最先端の製造手法に加え、徹底した品質管理により、さまざまな顧客の仕様に正確に対応したエッセンシャルオイルが確実に製造されています。
この方法で製造されたベルガモットエッセンスの95%が香水の製造に利用されています。世界的に有名な香水メーカーの多くが、Capua 1880社製のベルガモットオイルを香水のトップノートとして使用しています。残りの5%は、飲料業界でフレーバーとして使用されています。
蒸留プロセス
第1段階で抽出された原料オイルは、合計5つの蒸留ラインで精製された後、一時的にCA貯蔵されます。エッセンシャルオイルの原料オイルの蒸留は、香りに影響を与えないように細心の注意を払って行わなければなりません。そのため、 Capua 1880社は、1990年代後半には、薄膜蒸発装置とショートパス蒸留装置の真空供給をBuschのCOBRAドライスクリュー真空テクノロジーに切り替えることを決めました。それまで利用していた水封式真空ポンプでは、40~60 hPa(mbar)の真空レベルしか得られませんでした。そのため、蒸発のためにより高い温度が必要となりました。果物の種類にもよりますが、この温度は薄膜蒸発装置では80~90℃となりました。当社のソリューション
現在、すべての薄膜蒸発装置には、より高い真空をキープできるCOBRAスクリュー真空ポンプが搭載されています。この場合のメリットは、周囲温度で蒸留プロセスを実行できるという点にあります。周囲温度の変化やオイルの種類の違いがあるため、真空ポンプの動作真空や排気速度の微調整が必要になる場合もあります。これは、真空ポンプの周波数制御モーターを調整することによって簡単に行えます。
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図2:柑橘類からエッセンシャルオイルを得るためのショートパス蒸留装置。出典:Capua 1880
ショートパス蒸留装置(図2)は、さらに低い圧力で運転されます。このため、COBRAスクリュー真空ポンプの上流にメカニカルブースターポンプが設置されます。これらのメカニカルブースターポンプも周波数制御モーターで駆動されるため、必要に応じて調整することができます。ショートパス蒸留では、正確な運転圧力も蒸留するオイルによって異なります。動作温度は通常、周囲温度よりわずかに高くなりますが、水封式真空ポンプを使用した場合と比べれば大幅に低い温度となります。
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図3:薄膜蒸発装置およびショートパス蒸留装置のバックポンプとしてCOBRAスクリュー真空ポンプが使用されています。
BuschのCOBRAスクリュー真空ポンプ(図3)は、高真空と、潤滑油や作動液を使わないドライな圧縮が必須のアプリケーション向けに開発されました。この圧縮方式なら潤滑油や作動液がプロセスと反応するのを防止することができます。
それまでに使われていた水封式真空ポンプとの大きな違いは、COBRA スクリュー真空ポンプでは、プロセスガスを圧縮するための潤滑剤や作動流体が不要であるという点でした。これが、「ドライ」スクリュー式真空ポンプという名前の由来です。
それまでに使われていた水封式真空ポンプとの大きな違いは、COBRA スクリュー真空ポンプでは、プロセスガスを圧縮するための潤滑剤や作動流体が不要であるという点でした。これが、「ドライ」スクリュー式真空ポンプという名前の由来です。
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図4:潤滑油や作動液の不要なCOBRAスクリュー真空ポンプ。
COBRAスクリュー真空ポンプ
COBRAスクリュー真空ポンプ内部で、2本のスクリュー型のローターが反対方向に回転します(図4)。抽出されたベーパーは、シリンダーとスクリューの溝の間で捕捉され、圧縮されて排気口に移動します。圧縮プロセス中に、スクリューローターが互いに接触したり、シリンダーと接触したりすることはありません。緻密な製造技術と可動部のクリアランス調整技術がこの動作原理を可能にし0.1 hPa(mbar)未満という優れた到達真空度を実現します。COBRAスクリュー真空ポンプは水冷式です。それによりポンプ本体の温度分布が均一となり、プロセス全体を通じて熱安定性が保たれます。不等ピッチのスクリュー形状により、プロセスガスが予備圧縮されます。このメリットは、ガス温度と真空ポンプの消費電力の両方が大幅に低減されるという点です。一般的に、水封式真空ポンプよりもドライスクリュー式真空ポンプのほうが運転温度は高くなります。そのため、真空ポンプ内でのべーパーの凝結が防止されます。
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図5:蒸留プロセスを経て完成した高純度の製品:手前のサイトグラスは蒸留された最終製品、奥はブラッドオレンジの果皮から抽出されたオイルです。
Capua 1880社にとってのメリット
水封式からドライスクリュー真空テクノロジーへの切り替えは、Capua 1880社にとって非常に大きなメリットとなっています。- エッセンシャルオイルの品質を簡単に守ることができるようになりました。
- 蒸留プロセスにおける温度上昇による品質低下を完全に防ぐことができます。
- 蒸留は製品に合わせて厳密に設定された圧力で行われます。最適な条件が、香りの品質を高めます。
- 完成したオイルは完全に無色透明です(図5)。
水封式真空テクノロジーを排除したことにより、作動流体としての水やそのためのコスト、およびメンテナンス作業のための追加費用もなくなりました。
Capua 1880社は、Buschとサービス契約を結んでいます。契約では、Buschのサービスエンジニアが年に1回、COBRA真空ポンプおよび真空システムを点検し、整備する取り決めになっています。それ以上のメンテナンス作業は不要です。
Capua 1880社は、20年前にBuschのCOBRAスクリューテクノロジーに切り替えたときの判断が正しかったと確信しています。これにより、柑橘類からのエッセンシャルオイル製造にも新たな品質基準が生まれました。