色の異なる窒化物
現在使われているドリルの多くは、先端部が鮮やかな色に輝き、もはやスチール製には見えません。しかし、この見た目の多彩さは、美しさの問題ではなく、硬さに関係するものです。ドリルの先端は、硬い材料の層でコーティングされています。一般的に、これは金属の窒化物であり、それぞれの素材に特有の色があります。たとえば、窒化チタンは金のような輝きをもち、窒化ジルコニウムの鮮やかな黄色はレモネードを連想させます。また、アルミ クロム化合物はスタイリッシュなブルーになります。このようなコーティングは、他の工具や摩耗の激しい機械の部品にも見られます。各種コーティング材が持つ特色は色だけでなく、硬さ、耐熱性、摩擦係数、コーティングの厚み(通常は数マイクロメートルの範囲)もさまざまです。コーティングは用途に応じて選択します。たとえば、明るい黄色の窒化ジルコニウムは、アルミニウム合金の加工に使用されます。
ガスのイオン化
硬質皮膜のコーティングは通常、物理蒸着(PVD)の一種である真空アーク蒸着法で行われます。真空アーク蒸着では、真空中でアーク放電を利用しカソードを蒸発させ、被膜となる物質を作ります。カソードにはコーティングのベースとなる金属を使い、アノードは被処理物、つまりコーティングを施す工具などとなります。真空チャンバー内でカソードである金属が「燃え」プラズマ状態となり、イオン化した金属がアノードである工具に引き寄せられます。金属と反応させ窒化する目的で、外部から純窒素を送り込みます。反応によって生成された物質が、被処理物の表面にきめ細かく密着した膜を形成します。チャンバー内を高真空にすることで、比較的低温の400度前後で一連のプロセスを行うことが可能となり、また、異物の混入も防止できます。このプロセスに最適な真空システムはBusch の幅広い製品を組み合わせて構築できます。