化学および製薬プロセス向け真空技術

Maulburg, Germany 化学および製薬プロセスにおいて、適した真空技術の選定には、しばしば困難がつきまといます。まず、当然ですが動作圧力で必要とされる排気速度と排気時間を達成できる真空システムが必要となります。次に、プロセスガスの影響を確認することと、影響する場合の対策が求められます。例えば、CIP(定置洗浄)やガス回収に関するすべての要件を満たさなければなりません。採用する真空技術の選定においては、信頼性と経済効率も重要な判断材料になります。ここでは、化学および製薬プロセス技術において主流の3つの真空技術を紹介します: 水封式真空ポンプ, ドライスクリュー式真空ポンプ, ワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプ。
図1: ブッシュのDolphin水封式真空ポンプ (Source: Busch Dienste GmbH)
図1: ブッシュのDolphin水封式真空ポンプ (Source: Busch Dienste GmbH)

水封式真空ポンプ

多くの用途で使用されている水封式真空ポンプ(図1)は、 回転容積式ポンプの一種であり、円筒形のハウジング内に1つのインペラーが偏心的に取り付けられており(図2)、 通常は水が封液に使用されます。インペラーが回転すると、封液が遠心力によってハウジング内壁に沿って輪を形成し、インペラーのブレード間のスペースが閉じた空間になります。インペラーが偏心的に配置されているため、この閉じた空間の容積は変化します。容積が大きくなるところでプロセスガスは吸引され、 容積が小さくなるところで、ガスは圧縮されて排気口から排出されます。水封式真空ポンプの封液システムには、シンプルなワンパス(循環なし)、部分再循環、完全再循環といったシステムがあります。 

長年にわたり、これらの真空ポンプは、化学プロセスにおいて丈夫で信頼性の高い真空源としての評価を築き上げてきました。例えば封液がワンパスや部分再循環なら熱も封液とともに継続的に排出されるため、真空ポンプはほぼ一定の温度で動作します。つまり、プロセスガスの温度が目立って上昇することがなく、真空ポンプが比較的低温で動作するということになります。これによって、余計な反応や爆発のリスクが大幅に抑えられます。動作温度が低いため、蒸気の凝縮が促進され、真空ポンプの定格排気速度が上昇します。


図2: 2段式の水封式真空ポンプの動作原理 (Source: Busch Dienste GmbH)

多くの場合、封液には水が使われますが、エチレングリコール、鉱物油、有機溶剤などが使用されるケースもあります。真空ポンプの到達真空度は、蒸気圧と封液の粘度によって異なります。特に封液の粘度は、真空ポンプの消費電力に直結します。

水封式真空ポンプには、さまざまなバージョン、素材、シャフトシールのものがあります

水封式真空ポンプのメリット:

  • システムに入る蒸気や液体の影響が少ない
  • さまざまな材質のバージョンがあり、プロセスガスに合わせてカスタマイズできる
     

デメリット:

  • プロセスガスの凝縮などによって封液が汚染される可能性がある。その場合は使用後、封液を廃棄する前に処理する必要がある
  • エネルギー消費量が多い
  • 到達真空度が封液の蒸気圧次第で変わる


ドライスクリュー式真空ポンプ

ドライスクリュー式真空技術も、化学および製薬業界で幅広く使用されています。ただし、これは水封式技術と比べると歴史は浅く、
ブッシュが初めてのドライスクリュー式真空ポンプ、COBRA ACを発売したのは、1990年代です。前述の水封式真空ポンプとの大きな違いは、封液がないという点です(図3)。これが、「ドライ」スクリュー式真空ポンプという名前の由来です。

図3: COBRA NCスクリュー式真空ポンプ (Source: Busch Dienste GmbH)

スクリュー式真空ポンプでは、2つのスクリュー型のローターが反対方向に回転します(図4)。吸引されたガスは、シリンダーとスクリューの溝の間で捕捉され、圧縮されながら排気口へ運ばれます。圧縮プロセス中は、スクリューローターが互いに接触したり、シリンダーと接触したりすることはありません。緻密な製造技術と可動部のクリアランス調整技術がこの動作原理を可能にし、0.1 hPa未満という優れた到達真空度を実現します。

図4: 最新のスクリュー式真空ポンプの動作原理 (Source: Busch Dienste GmbH)

スクリュー式真空ポンプは水冷式です。それによりポンプ本体の温度分布が均一となり、プロセス全体を通じて熱安定性が保たれます。

最新のスクリュー式真空ポンプでは不等ピッチスクリューが採用されており、スクリュー全体で均一に圧縮を行います。こうして圧縮チャンバー全体が同じ温度となり、モニタリングや制御が容易になります。旧世代のスクリュー式真空ポンプでは、等ピッチのスクリューが使われています。この場合、スクリューの回転の終盤でプロセスガスの圧縮が行われるため、そこだけ非常に高温になります。そのため、水冷でもってしても理想的な動作温度に調節することが、難しくなります。一般的に、ドライスクリュー式真空ポンプは、水封式真空ポンプよりも運転温度は高くなります。したがって、プロセスガスの成分の凝縮が大きく抑制されます。こうして、汚染や反応を引き起こすことなく、プロセスガスを排気することが可能となります。吸引されるガスと接触する構成部品はすべて鋳鉄でできています。その表面は化学物質への耐性を持たせる特殊コーティング処理も可能ですし、コーティング無しも可能です。未使用時に腐食や堆積物が発生しないよう、プロセス終了後は、適宜洗浄液で真空ポンプをフラッシングし、窒素でパージすることを推奨します。 

等ピッチ不等ピッチのスクリュー形状、各種コーティングのオプションを持つブッシュのスクリュー式真空ポンプは、多くの化学物質に対応することができます。

ドライスクリュー式真空ポンプのメリット:

  • ドライ圧縮により、プロセスガスと潤滑油等との反応のリスクがない
  • 高い真空レベル
  • 優れたエネルギー効率
  • 最適な材質の使用や温度管理により、ほぼすべてのプロセスガスに対応可能


ドライスクリュー式真空ポンプのデメリット:

  • 固形物がポンプ内部に入ると運転に支障あり
  • 高温で反応しやすいプロセスガスは使用不可  


ワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプ

オイル潤滑式ロータリーベーン真空ポンプは、長年にわたり多くの分野で愛用されてきました。現在では、業界で最も幅広く利用されている真空ポンプの1つとなっています。ブッシュは、1960年代にはすでに2段式のワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプ、Huckepackを開発していました。これは、化学および製薬のプロセス技術向けに特化し設計されたものです。それ以来、ブッシュはこの真空ポンプの改良を続けています。その堅牢性が評価され、現在に至るまで産業界で幅広く利用されています。

図5: Huckepackワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプ (Source: Busch Dienste GmbH)

Huckepackロータリーベーン真空ポンプ(図5)には、ロータリーベーン原理で動作するその他の真空ポンプと大きく異なる点が3つあります。

  1. 上下に配置された2つの圧縮ステージが互いに接続されており、1段目で圧縮されたプロセスガスが、2段目で更に圧縮されます。これにより、より良い到達真空度が得られます
  2. この真空ポンプはワンススルー方式のオイル潤滑を特徴とし、常に新鮮な潤滑液(オイルまたはプロセスガスに適合するその他の液体)が圧縮チャンバーに注入されます。一方、その他のロータリーベーン真空ポンプでは、循環式オイルが潤滑に使用されています。
  3. HHuckepackロータリーベーン真空ポンプは水冷式で、動作温度を一定範囲内で調整することができます。

 

Huckepackロータリーベーン真空ポンプは、回転容積式ポンプです。円筒形のハウジング内にローターが偏心して取り付けられています。ローターのスロット内で滑るように動くベーンが、 ローターの回転動作により生じた遠心力によって、スロットからスライドしシリンダーの壁に押しつけられます。これにより、容積の異なるスペースが生じ、吸引力と圧縮効果が発生します。摩擦を抑え、密封性を高めるために、圧縮チャンバー内にはオイルが継続的に注入されます。両方の圧縮ステージを経たプロセスガスは、潤滑液と共に排気口から排出され、その後分離されます。圧縮ステージの冷却方法は2段共に水冷式です。冷却システムはワンパス式と循環式からお選びいただけます。 

図6: Huckepackワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプの動作原理 (Source: Busch Dienste GmbH)

潤滑液は真空ポンプ内を1度しか通過しないため、粘度が150センチストークス(cSt)であればほぼすべての液体が使用可能です。運転中は潤滑液で真空ポンプが常時洗浄されるため、腐食や堆積物から保護されます。各種溶剤に対する耐性を確保するため、ブッシュは3種類の材質のベーンを用意しています。 

ワンススルーオイル式ロータリーベーン真空ポンプのメリット:

  • 高い真空レベル
  • 非常に優れた堅牢性と信頼性
  • 高いサービス性
  • 酸性のベーパーやモノマー、あるいは他の真空技術を使用した場合に重合が発生する生成物の搬送に最適


デメリット: 潤滑液の処理または適切な廃棄が必要

まとめ

ここで取り上げたすべての真空発生技術に、メリットとデメリットがあります。あらゆる用途に適した、1つの理想的なソリューションはありません。したがって選定の際には、真空の専門家の協力を得て、プロセス条件、プロセスガス、制御システムの組込みから、将来的な真空生成の経済効率、安全性および信頼性まで、プロセスにおける重要なパラメーターをすべて考慮することが大切です。このように全てのファクターを考慮することで、ユーザーの要件に合わせカスタマイズされた真空システムが実現できます。 


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