骨の成長を促進 - 真空プラズマ溶射による多孔構造の安定性

骨の成長を促進 - 真空プラズマ溶射による多孔構造の安定性

人工骨の多くは、補助具なしで骨に直接埋め込まれます。多孔質加工された人工骨の表面に骨が成長して入り込み、固定されるようになっています。真空プラズマ溶射は、この加工で必要となる形状と安定性を与えます。
VPS_Bone-Implants-4.jpg

ヒトの骨は、再形成を繰り返しています。破骨細胞が周囲の骨を常時貪食していく一方で、 体内では骨芽細胞から細胞が作られ、それが新しい骨として使用されています。折れた骨が比較的早く元に戻るのは、このためです。この仕組みを利用し、人工骨も骨セメントを使わずに骨に直接埋め込まれます。

固い骨

骨折が癒えるときには、骨と骨が繋がります。しかし、人工骨を使う場合は、骨が金属製の異物にぶつかることになります。骨の成長を促すには、骨梁が生着しやすい表面形状である必要があります。骨梁とは、骨の内部で立体的な網目構造を構成する小さな骨です。網目が人工骨表面のくぼみ部分にうまくはまり、強度が増すのが理想的です。それと同時に、そのくぼみの深さが十分にあり、骨梁がしっかり付くことが必要となります。

材料工学の観点から見ると、これは非常に大きな課題となります。インプラントは、表面に多孔質を備えつつ、膨大な負荷に長期間絶え得る強度も備える必要があります。そのような理由で、材料には安定性の高いチタンが使われています。滑らかな表面を作るためには、文字通り「壊せない絆」で基材に密着するコーティングが必要となります。真空プラズマ溶射(VPS)は、この問題を解決する技術です。

超高純度のガス雰囲気

このプロセスでは、コーティング前の人工骨を真空チャンバー内に配置します。0.08 hPa(mbar)程度の真空では、大気中の酸素と水蒸気が全てチャンバーから排出され、超高純度のガス雰囲気を作り出す準備が整います。その後、チャンバーをアルゴンで洗浄し、再度排気を行います。この後で、プロセスガスをチャンバー内に供給します。プラズマバーナーをオンにすると、実際のコーティングプロセスが始まります。

強い電流を流すとアークが発生し、プロセスガスがプラズマに変わります。通常はチタン粉末がガス噴射に混入されます。20,000℃を超える温度では、粉末が溶融して液滴となって対象物の表面に噴きつけられます。この工程でエネルギー密度を高めることにより、非常に安定した接合状態が可能となります。プロセスを厳密に管理することで表面の仕上がりの形状を制御し、必要なくぼみ(孔)を作ることができます。バックポンプとして周波数制御付きのCOBRAスクリュー真空ポンプを使用し、Pumaメカニカルブースターポンプと併用することが、大型のVPSシステムでは定評のある構成となっています。

短く答えるならば、答えは「ノー」です。人工骨(内部人工器官)の構成要素の大部分がコバルトクロム合金(CoCr)でできています。常に変化し続ける負荷レベル下での優れた安定性により、この合金は人体の内部における優れた選択肢であると証明されています。ただし、骨細胞は合金製の表面に直接接合することができません。したがって、CoCr製の人工骨は、骨セメントと呼ばれる合成樹脂によって骨に固定されます。

チタンは、CoCrと同レベルの安定性を持ち、しかも骨に対する反応が良好です。骨細胞はチタンと直接接合が可能です。タンタルでも同等の結果が得られますが、タンタルは非常に稀少でかなり高価であるため、人工骨にはほとんど使用されていません。いくつかのファクターから、人工骨をセメント固定するか、直接埋め込むかを判断します。例えば、人工股関節はセメントを使わずに埋め込むのが一般的であり、膝関節ではセメントが使われるのが一般的です。


ニュースレター「World of Vacuum」の配信をお申し込みください。
真空に関する最新のニュースを見逃さないよう、今すぐ配信登録をしましょう。

購読