小さなオールラウンダー - 真空下で製造されるナノワイヤーの大きな可能性

小さなオールラウンダー - 真空下で製造されるナノワイヤーの大きな可能性

高性能ソーラーパネル、高速コンピューター、精密な診断用の医療機器 ― 半導体ナノワイヤーは、それらのすべてに貢献できる可能性があります。材料学者は、半導体ナノワイヤーの開発や製造に、非常に高い真空レベルを利用しています。
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鉄、銅、鋼を引き延ばして作るワイヤーは、中期青銅器時代から人類が使用してきた実用的な材料です。しかし、ナノワイヤーがそれらと似ているのは、形と名前だけです。ナノワイヤーは、金属だけでなく、半金属または高純度の炭素からも製造することができます。また、製造は、固体の原料を引き延ばすという方法ではなく、合成によって行われます。そして、決定的な違いとなるのがサイズです。ナノワイヤーの長さは最大で数マイクロメートル、直径は5~100ナノメートルです。人間の髪の毛の太さが約50,000ナノメートルですから、ナノワイヤーと比べると、髪の毛は船舶用の太いロープのように見えます。

高性能で多目的な要素

この長い構造が1990年代初めに発見されると、 研究者や材料科学者は、すぐにその長い物体の可能性を認識しました。この小さな断片は、電子機器の小型化を推進し、マイクロからナノへの移行に特に役立つと考えられています。

このナノ世界の小さな物質のアスペクト比は、非常に特殊な物理法則に支配されています。電子がより速く移動するため、ナノワイヤーを使うと従来の材料よりも電流を簡単に制御することができます。これは、革新的なマイクロチップ、もっと正確に言えばナノチップを構築するための重要な要素です。ナノワイヤーを利用することで、将来的には非常に高性能なコンピュータや診断用医療機器向けの高精度センサーの製造が可能になると考えられています。

太陽光発電は、さらに有望な応用分野です。従来の太陽電池セルが吸収できるのは太陽光の約60%ですが、 ナノワイヤーを並べて詰め込むと、太陽光の90%を吸収することができます。その小さな組織で光を束ね放射することもできます。また、チップに組み込めば小さな半導体レーザーとして使用することもできます。

不純物のない成長のための環境づくりに真空が貢献

ナノワイヤーがその優れた特性を発揮するためには、素材の純度を極限まで高める必要があり、混入物は許されません。このため、製造には非常に高い真空レベル利用されることになります。Buschは、この分野にも参入しています。

まず、シリコン基盤に原料ガスを照射します。その後、半導体結晶が自己組織化し、上方に成長して、望ましいワイヤーの形状となります。この手順を使用し、特定の用途にカスタマイズした多層構造の半導体ナノワイヤーを作成することもできます。各層がそれぞれ異なるタスクを処理できるため、技術的な可能性がさらに広がります。現在、研究に力が注がれています。

古典的な物理法則は、私たちが長い間想定していたほど普遍的なものではありません。ナノスケールの小さな世界を深く掘り下げてみると、驚くべきことがわかりました。50ナノメートルがひとつの境界線となっています。50ナノメートルより小さな世界では、物質は量子物理学の法則に従います。

ナノ粒子は非常に小さいため、その表面積が体積に比べて非常に大きくなります。表面が比較的大きいことで、ナノ粒子は容易に化学反応を起こします。慣性力が効力を失い、ファンデルワールス力などの表面力の効果が増強されます。表面電荷やブラウン運動のような熱力学的作用も働きます。ここでは粒子が小さいほど、その影響は強くなります。

これによってナノ粒子は、大きな粒子や固体とは大きく異なる光学的、磁気的、電気的特性を持つことになります。たとえば、ナノの世界では、金は赤から深紅に発光します。ナノサイズの水滴は数時間にわたって安定しており、蒸発することなく空気中を浮遊することもできます。カーボンナノチューブは非常に裂けにくく、弾力性があるほか、 熱を伝導し、構造によっては最小限の損失で電流を流すことができます。


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