未来のエネルギーのための超伝導 - 真空によりハイテクケーブルの低温を実現

未来のエネルギーのための超伝導 - 真空によりハイテクケーブルの低温を実現

極度の低温下で実現できる超伝導現象では、電流が抵抗なく流れます。つまり電流の損失を最小限に抑えられるメリットがあるのですが、真空がこの低温の実現に一役買っているのです。
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温度が下がると電機は流れやすくなる

「電気が流れるところには抵抗がある」。オランダの物理学者、ヘイケ・カマリン・オンネスが電気科学に関するこの仮定を覆したのは、1911年、超伝導現象を発見した時でした。量子物理学の法則に従うと、非常に低い温度にまで冷却した場合、一部の物質には電気抵抗がなくなります。そこでは電気がエネルギーの損失なしに流れることができます。ヨーロッパの電力網の送電による損失は約6%です。したがって、抵抗のない電力輸送ができれば、必要な発電所の数を減らすことができると考えられます。しかし、実際の超伝導ケーブルは極めて複雑なハイテク構造です。

真空による熱からの保護

超伝導ケーブルは、従来の電線とは大きく異なり、直径の異なるホースのような層が何層も重なった構造となっています。通電している層には、セラミック素材製の超伝導物質の束が含まれています。これらの素材の転移温度、つまり、素材が超伝導特性をもつようになるポイントは、マイナス130℃~180℃です。これらの温度は、超伝導物理学の世界では高い温度であり、セラミックは高温超伝導物質と呼ばれます。

しかしそれでも周囲の温度と比べれば極めて低い温度が必要となります。このためケーブルの束は、極低温の液体窒素で冷却されます。超伝導物質層の周囲の空洞層には液体窒素が常に流されています。さらに外気温の影響から守るため、魔法瓶と同じ仕組みで、2枚の壁の間を真空にした層をジャケットのようにコーティングすることでケーブルは断熱されています。

許容電流に関する実証実験では、このようなケーブルをエッセン市中心部の2つの変電所間に1キロメートルの長さで配置しました。実験は2年間行われ見事合格したのですが、この断熱真空ジャケットだけでなく、窒素の冷却にも真空技術が利用されました。この冷却装置では、気体をマイナス196℃という沸点よりも低い極低温に保つために真空ポンプが利用されています。

効率性の向上と医療技術

複雑な層構造であるにもかかわらず、超伝導を利用したケーブルは一般的な銅を用いたケーブルよりもずっと細くすることができます。同じ直径のものであれば、輸送できる電気の容量は5倍となります。また、従来のケーブルよりもより高い電圧にも耐えることができます。そのため専門家のあいだでは、この新しいケーブル技術はエネルギー効率に優れた電力輸送手段となるだけでなく、省スペースにも貢献すると認識されています。省スペース化も、都市部のプロジェクトでは重要なポイントです。超伝導ケーブルを使って省スペース化すれば、都市の外側の送電線からの電力供給することや、一部の変電所を廃止することもできると考えられます。

超伝導体は、変圧器や発電機およびモーターの効率も向上させる可能性があります。銅ケーブルに代えて超伝導ケーブルを採用すると、小型化や軽量化が実現できます。軽くてパワフルな電気モーターは、航空機のエンジンにも利用できる可能性があります。一部の航空機メーカーは、すでにそのようなコンセプトを検討しています。

ところで、超伝導は、研究機関や医療機関においてずっと以前から検証されてきました。たとえば、粒子加速器には超伝導磁気コイルが搭載されています。この種の磁石は、医療診断でも利用されています。超伝導により、磁気共鳴画像法(MRI)では、放射線被爆なしで人体に「光を当てる」非常に強力な磁場を生成できます。真空技術は、このような用途における冷却や断熱にも役立っています。

ブッシュは、世界中の超伝導ケーブルや磁気コイルの冷却および断熱用に真空システムを提供しています。

MRIによる精度の高い診断

磁気共鳴画像法(MRI、核磁気共鳴画像法と呼ばれる場合もある)は、医療診断に不可欠なものとなっています。MRIでは、X線画像では見えない細部にわたる身体の画像が得られます。MRIを使うと、訓練を受けた技師の目により、筋肉、靱帯、腱、血管、さらには神経の損傷を特定することもできます。これにより、医師は、外科手術や腫瘍性疾患の治療に不可欠な情報を得ることができます。

画像は、非常に強力な磁場と電波を利用し、人体組織内の水素原子核を動かすことによって得られます。この動き、つまり「核スピン」によって電磁波が生じます。これらがMRI機器によって記録され、このデータを処理して、身体構造を映したコントラストの強い画像が得られます。主に骨を表示するX線画像とは異なり、MRIの画像では、筋肉など身体の軟組織も詳細な解像度で示すことができます。この機械はミリメートルの薄さの層で測定が行われるため、これらの画像を編集して3D画像を作成することもできます。画像撮影プロセスに必要な磁場は、用途にもよりますが、地球の磁場の20,000~100,000倍となります。このような強い磁場の生成と利用には、超伝導電磁コイルでなければ実現できません。


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