氷がいきなり蒸発すると - 真空により、フリーズドライ中の昇華が可能に

氷がいきなり蒸発すると - 真空により、フリーズドライ中の昇華が可能に

食品をフリーズドライすると、ほとんどの栄養素を失わずにキープすることができます。この食品に優しい加工方法には、超低温だけでなく、真空も不可欠です。
05.2_M%C3%BCsli.jpg

ミューズリー(ドライフルーツやナッツ類の入ったシリアル)がヘルシーなのは、 穀物の全粒が含まれており、食物繊維が豊富だからです。ビタミンやミネラルといった栄養素も豊富なうえ、 味も申し分ありません。しかし、朝早くからフルーツを剥いたり刻んだりというのは、面倒という人もいるでしょう。そんな人のために、インスタントのミックス品があります。牛乳やヨーグルトをかけるだけで、すぐに食べることができます。シリアルはすでに長期保存が可能で、栄養価も変わらずに保つことができます。

しかし、インスタントのミューズリーは自家製のものと同じくらい良いものなのでしょうか?従来のドライフルーツは、一見しただけで生のフルーツの状態からかけ離れていることが分かります。外観がしなびて見えるだけでなく、元来の色や含まれていた大量のビタミン類も失われています。 

氷が蒸気に

最新のフリーズドライ技術では、このような品質の劣化を大幅に抑え、フルーツのビタミンや色をキープしたまま長期保存できるようになりました。 フリーズドライは、物質が液体という相を経ずに、固体から直接気体に相転移する、昇華という物理現象を活用した技術です。 例えば水の場合、氷が水にならずにいきなり蒸発する状態なのですが、 もちろん、これは、通常の条件では発生せず、真空下において発生します。

具体的にはフルーツなどの乾燥対象物を、窒素または二酸化炭素など、マイナス50度以下の超低温ガスをつかって、通常の圧力下で急速冷凍します。 こうして非常に短時間で冷却されたフルーツ内には、組織を変化させてしまう氷の結晶が形成されません。次にフルーツは、真空チャンバーに入れられ、減圧されるのですが、 気圧が一定以下になれば、フルーツ内の凍った水分子は昇華、つまり液体にならずに直接蒸発していきます。これがフリーズドライ製法のプロセスです。 

本来の姿をそのままに

この方法なら、食材の水分を除去するのに加熱したり、長時間かけて乾燥する必要がありません。壊れやすいビタミンなどの栄養素、香り、そして色も、損なわれません。一様に茶色くしなびてしまうのではなく、フリーズドライされたフルーツには、本来の色が残ります。固さも大きく変わることがありません。フリーズドライで乾燥した細胞は、スポンジ状の骨組みとしてそのまま残り、空洞ができます。その空洞は、再び水分を与えると急速にその水分を取り込み、元の状態に戻ります。このようにして再度水分を吸収した食材は、生のものと区別するのが難しい程、良好に復元できる場合もあります。 


南米の高原に暮らすインカやアイマラといった先住民族は、ヨーロッパ人が到着するずっと以前から、フリーズドライをジャガイモの保存と毒抜きに活用していたのです。 現在の品種では含有が表皮部分に限られるのですが、当時栽培されていた種類のジャガイモには比較的高濃度で有毒成分のアルカロイドが含まれていました。

そういったジャガイモをまずマイナス10度にもなる夜間の屋外に並べ、霜に晒します。温度の上がる日中はワラをかけておきます。その後、水に浸し、また凍らせるという作業を繰り返します。そうすると水分と毒が抜け、最終的にはアンデス地方でチューニョと呼ばれるかなりしぼんだ、軽い小さな保存食になります。 このチューニョは調理前に水に浸して戻します。そうすると、米やパスタのように膨らむので、それを煮て調理します。柔らかく茹でたチューニョをニンニク、玉ねぎ、玉子やチーズと炒めると、この地域で一般的によく食べられている、栄養たっぷりの副菜となります。 現在でもチリ、ペルー、ボリビアの高地では、ジャガイモの保存期間を延ばし、輸送しやすくする方法としてこのようなフリーズドライが広く利用されています。


ニュースレター「World of Vacuum」の配信をお申し込みください。
真空に関する最新のニュースを見逃さないよう、今すぐ配信登録をしましょう。

購読