電子顕微鏡で見たウイルスの姿 - ウイルスの観察には真空が不可欠

電子顕微鏡で見たウイルスの姿 - ウイルスの観察には真空が不可欠

電子顕微鏡を使うことで、 ウイルスや結晶格子など、最小レベルの構造物の姿を詳細に捉えることができます。電子顕微鏡の内部は、常に高真空状態となっています。
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ミクロの世界の先へ

光の波長の関係で、光学ズームの倍率には限界があります。対象物が0.5マイクロメートルよりも小さければ、従来の光学顕微鏡では見えません。ほとんどの細菌は光学顕微鏡でも見ることができますが、それよりはるかに小さなウイルスなどは観察できません。これを見るには、別の物理的な装置が必要となります。

エルンスト・ルスカとマックス・クノールは、電子に着目しました。1931年、2人はベルリンのシャルロッテンブルク地区にあるTechnische Hochschule(工科大学)で、最初の透過型電子顕微鏡(TEM)を開発しました。この電子顕微鏡により、それまで謎だったミクロの世界を人の眼で見ることができるようになりました。彼らは、薄い金属箔の結晶構造を初めて画像に捉え、観察することに成功しました。

光の代わりに電子を利用

光学顕微鏡では、レンズで光を捉え、屈折させます。この光学効果によって拡大が可能になります。これとまったく違う原理なのが、電子を利用したTEMです:電子を加速、収束したビームを試料に照射します。そこで試料と電子の相互作用が発生します。試料を透過した電子の軌道を評価し像を結ばせます。電子の波長は数ピコメートルのため、電子顕微鏡ではナノメートル領域の構造を識別し観察することができます。

TEMでは、試料を透過した電子を評価しますので、 極薄い試料でないとうまくいきません。そのため多くの場合、試料には複雑な下準備が必要となります。走査型電子顕微鏡(SEM)では、このような下準備は必要ありません。SEMの電子ビームは、グリッドパターンで3次元の物体をスキャンすることができます。試料に電子を当てると、反射する電子とそこから発生する電子があります。これらの電子を検出器で捕捉し、像を結びます。このようにして得られた微生物の画像を拡大してみると、空想の世界のモンスターが連想されることも少なくありません。

SEMでもTEMでも同様ですが、結像ができるのは、電子と試料の間に電子の軌道を邪魔する物質がない場合だけです。そこに空気分子が存在しないことが条件となります。したがって、電子顕微鏡の内部は、適切な真空ポンプによって常に高真空に保たれています。Busch Groupは、このような用途に最適なソリューションを各種提供しています。

1931年に作られた最初の電子顕微鏡の拡大倍率は400倍でした。この画期的な功績により、共同発明者であるエルンスト・ルスカは、その55年後の1986年にノーベル物理学賞を受賞しました。ルスカは、1938年にシーメンス社でこの技術を市場に投入しました。開発を続けることで解像度はさらに向上し、 現在では、透過型電子顕微鏡の倍率は何百万倍、分解能は0.08ナノメートルに達しており、 特に分子構造を詳細にマッピングすることができます。

電子顕微鏡を使用して初めて、細胞内を詳細に検査できるようになりました。現在でも電子顕微鏡はウイルス研究において重要な役割を果たしています。形態や構造の解明にも利用することができます。ここから、感染リスクや伝播メカニズムに関する重要な知見を得ることができるかもしれません。医学と生物学の分野では、このような理由以外にも電子顕微鏡は欠かせないツールとなっています。材料研究もまた、電子顕微鏡の重要な応用分野です。


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