地上の宇宙空間 - オハイオ州の巨大な真空チャンバーで宇宙空間をシミュレーション

地上の宇宙空間 - オハイオ州の巨大な真空チャンバーで宇宙空間をシミュレーション

機器類を宇宙に向けて打ち上げる前に、NASAは資材を米国オハイオ州にあるGlenn Research Centerに送ります。真空となる過酷な宇宙空間への適応性がここでテストされます。
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ガリレオの夢

米国オハイオ州の北部にあるサンダスキー近郊のNASA研究施設の白いドームが、宇宙空間シミュレーション真空チャンバーを覆っています。高さ37メートル、直径30メートルのこの施設は、世界最大の真空チャンバーです。もしガリレオ ガリレイの存命中にこれが存在したなら、彼は大喜びしたことでしょう。この巨大な部屋の中では、ガリレオによる物体落下の法則が正しいことを実験的に観察し、一握りの羽毛がボウリングのボールと同じ速度で落下する様子を見ることができます。

ISSおよび火星ミッションのためのテスト

1969年に建設されたこのチャンバーは、その高い技術を提供する設備により、基本的研究のための実験場としても、新たな産業的開発の試験の場としても適したものになっています。しかし、この施設は主に、宇宙空間で使用する予定のあらゆる種類のハードウェアの試験場として、NASAのエンジニアによって利用されています。人工衛星、宇宙探査機、ロケットの推進部、乗務用カプセルおよび月面車両がこの場所ですでに前もって試験され、宇宙空間とほぼ同じ過酷な条件を経験します。この他にも、国際宇宙ステーション(ISS)のソーラーセイルを真空状態でどのように揚げるかといった実験が専門家によって行われました。現在、このセンターでの実験は火星ミッションが中心になっています。たとえば、2台の火星探査車のエアバッグによる着陸システムのテストが実施されています。

テスト項目は真空状態だけでなく、宇宙空間での大幅な温度変化や太陽からの強力な紫外線放射もシミュレーションに含まれます。チャンバー内の温度は60℃にまで上げることができるほか、マイナス160℃にまで下げることもできます。出力4,400キロワットの石英灯を使用して、太陽光の影響を人工的に再現します。

最先端の真空ポンプ

チャンバーの内側はアルミ張りとなっており、その容積は22,653立方メートルです。これは、オリンピックで使用する水泳プール約10個分に相当します。コンクリート製の外壁の厚みは2.4メートルあります。チャンバー側面にある15×15メートルのドアをボタン操作で閉じ内側の気圧を徐々に低下させた際、外からかかる力から構造体を保護するのがこの外壁です。


宇宙空間の超高真空に到達するために、ロータリー真空ポンプやターボ分子真空ポンプなど、さまざまな真空ポンプが組み合わされています。30トンの空気を抜くには数時間かかります。チャンバーの中には約2グラムしか残りません。空気圧は0.000000000013バール、つまり130マイクロパスカルとなります。これは、地球の大気圧の10億分の1に相当します。


重い物体は軽い物体よりも速く落下するか?アリストテレスは、紀元前300年頃にこの問題を投げかけ、後になって自らの観察に基づき、物体の落下速度は質量に依存すると主張しました。それから約2,000年後、物体の落下についての考察を重ねた後、ガリレオ ガリレイは、この古代の哲学者の理論に疑問を呈しました。ガリレオは、空気抵抗が影響することに気付いたのです。そこでガリレオは、傾斜面を作り、何度も真鍮の球を転がしました。その実験の中で、ガリレオは繰り返し勾配を変え、試験条件を変えながら、ベル、水メーターおよび自分の脈拍を使って球体が転がる時間を判定しました。

この実験の結果から、自由落下における物体の移動について落体の法則を発見しました。

1. 物体の落下速度(v)は、落下時間(t)に比例して上昇する。
2. 落下距離(h)は、落下時間の二乗(t2)に比例して増加する。

物体の質量または形状は、落下距離や落下速度には影響しません。しかし、ガリレオは自らの試行では近似値しか得られないということを十分認識していました。ガリレオが精密な実験結果を得るためには、真空チャンバーが必要でした。それは、オハイオ州にあるものよりもずっと小さなものでも十分だったでしょう。いずれにしても、すべての物体が同じ速度で落下するのは、空気抵抗のない真空状態の場合のみです。ガリレオが真空チャンバーなしで正しい結論に至ったという事実は、彼の科学的功績をさらに輝かしいものにしています。


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