真空で放射性廃棄物の放射能を低減 - 核変換により最終処分場が不要になる可能性

真空で放射性廃棄物の放射能を低減 - 核変換により最終処分場が不要になる可能性

原子力発電所から出る放射性廃棄物は、その放射能レベルが十分減衰するまで何千年にもわたって保管しておかなければなりません。しかし、少なくとも理論的には、核変換によって、その大部分を無害化できる可能性があります。真空ポンプは、このプロセスにおいて重要な役割を果たします。
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保管ではなく核変換を行うというのは、高レベルの放射性廃棄物を非放射性物質に変える、あるいは、少なくともその半減期を管理可能な期間にまで短縮するための有望なアプローチです。次に真空がどのような役割を果たしているかをご紹介します。

1,500万年という半減期

使用済み燃料棒に、1%でも放射性プルトニウムやその他の高レベル放射性同位体が含まれていれば、有害性がなくなるまで保管し続けなければなりませんが、その半減期ですら1,500万年に達する場合があります。現在、核燃料再処理工場ではすでにプルトニウムと残留核分裂性ウランをリサイクルし、新たな燃料棒を製造しています。残りの危険性の高い物質については、以前はほぼ無期限で最終的に保管するということになっていました。しかし、化学的に分離してから物理的な変化を起こすこと(核変換)も可能です。 

核変換は、加速器駆動システム(ADS)と呼ばれる施設の中で行われます。ADSの中核となるのは長さ100メートルの粒子加速器で、その中で陽子を光速付近まで加速させます。このプロセスにおいては、粒子同士が衝突しないようにする必要があります。そのため、システム内の特殊な真空ポンプが10-6~10-10 hPaという超高真空を生成します。 .

理想的な放射性崩壊

陽子線とよばれる高エネルギーの加速陽子を重金属にぶつけると、核が分裂します。その際、高エネルギーを持った中性子が放出され、核廃棄物の粒子に衝突します。この衝撃によって、放射性同位体の原子核内で多数の崩壊プロセスが始まります。このプロセスは半減期が大幅に短縮されるまで続きます。これを複数回行うことで、臨界の同位体の数を減らすことができます。

核分裂とは異なり、核変換が制御不能になることはありません。陽子線を停止すれば、連鎖反応が止まります。理論上、消費する以上のエネルギーがこのプロセスで発生します。これについては、少し前から研究所での取り組みが行われています。研究者らは、1990年代から産業規模でのADSの研究を行っており、 2020年には最初の実験的システムが日本で、 2023年には2つ目のシステムがベルギーのモルで運転開始見込みです。核廃棄物をリサイクルする発電所を1つ建てれば、毎年10か所の原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物を処理できる可能性もあります。核廃棄物の最終保管という問題は、ようやく管理可能なスケールになっていくでしょう。 


使用済み燃料棒には、95%のウランと1%のプルトニウムが含まれています。これらは粉砕後に硝酸で溶解されます。その後、化学反応を使い残留物をウラン、プルトニウム等それぞれに分離します。ウランの約10%は、再度濃縮して新しい燃料棒に再生することができます。プルトニウムも核燃料用に処理されます。

しかし、このリサイクルプロセスを経て残った物質の90%に、ヒ素からテルビウムまで、さまざまな元素の放射性同位体が含まれます。これらの放射性同位体から、わずかな量ながら、医療あるいは科学的な目的の放射線源として使用できる物質を抽出することもできます。残りは高レベル、中レベル、低レベルの放射性廃棄物に分けられます。約7%が高レベル放射性廃棄物であり、約1%が、核変換を行わなければ何百万年もの間保管しておかなければならないような「問題の廃棄物」となります。数千年もの保管を要する核廃棄物の量は、再処理を通じて大幅に削減されます。


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