即時エネルギー - 真空工程によるフライホイールの効率の向上

即時エネルギー - 真空工程によるフライホイールの効率の向上

フライホイールは、運動エネルギーを貯蔵し、即放出します。これは、素早く大量のエネルギーを要する場合に理想的です。真空によりこの技術の効率がさらにアップします。
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子どもなら誰でも、車輪を2、3回床に転がして手を離せばウィーンという音を立てながら走るミニカーのおもちゃで、ぜんまいの物理的原理に親しんでいます。このようなミニカーは、フライホイールによって動いています。子どもの手がミニカーを押すと、車輪につながった小さな金属製のディスクが素早く回転します。わずか数グラムの金属板の回転エネルギーだけで、遊び場でミニカーレースをすることができます。

真空で稼働効率を最適化

しかし、フライホイールは、単なるおもちゃではありません。最近の用途として、フライホイールは、主電源の変動を和らげたり、制動エネルギーを一時的に保存するために使用されています。多くの場合、フライホイール技術をより効率的に利用するために真空が適用されています。これは、回転数と回転速度が増せば抗力と乱流の影響も大きくなるためです。抗力と乱流により減速が起こると、蓄電性能が大きく低下します。摩擦熱が発生し、最先端のプラスチック製フライホイールが破損する場合もあります。空気抵抗の無い、高真空のカプセル化されたハウジングの中でホイールを回転させれば、これを防ぐことができます。また、アイドリング時の避けられないエネルギー損失が最小限に抑えられ、フライホイールの効率が高まります。

さらに、摩擦損失を最小限に抑えるため、回転軸には従来のボールベアリングに替わって磁気ベアリングが使用されるようになっています。その結果、ホイール軸は磁界の中に浮いた状態で、摩擦なしで回転します。

速度が重要

フライホイールは、運動体の中にエネルギーを貯蔵します。したがって従来型のフライホイールは金属製が多く、比較的重量がありまました。その制限因子は、周速と呼ばれるものです。これは、ホイールの外縁が回転する速度のことです。スピードが上昇すれば、遠心力も大きくなります。その結果、素材が限界に達し、破損する場合もあります。これを受けて、フライホイールの素材をより強度が高く、大きな質量を必要としないカーボンファイバーに移行する動きがあります。

フライホイールのエネルギー蓄積量は、回転速度の2乗分増加します。つまり、エネルギーを蓄積する能力は、ディスクの重さや大きさではなく、回転数を上げることで効率的に高めることができるということです。繊維強化プラスチックは軽く、1分あたり10万回転という超高速の回転にも耐える強度を持っています。

Porsche 918 RSRの真空チャンバー内のフライホイール発電機 | 'porsche 918 rsr' by cmonville, used under CC BY 2.0

確実で信頼できるテクノロジー

運動エネルギーの即時ストレージとしてのフライホイールの原理は、さまざまな用途で使われており、古くはろくろの動力として、また産業革命の時代には蒸気エンジンに、そして現代のレーシングカーにも利用されています。FIA(国際自動車連盟)のルールでは、ブレーキング時にエネルギーを蓄積し加速時に放出するフライホイールエネルギーストレージの使用が認められています。2012年のル・マン24時間レースでは、フライホイールエネルギーストレージを搭載した2台のアウディR18 e-トロン・クワトロが1位と2位を独占しました。

ただし、現在のフライホイールは通常、主電源の変動を抑えるために発電機の原動力として利用されています。配電網の外乱の97%は、3秒以内に収まります。ディーゼル式の非常用装置を使うには短すぎます。一方で、フライホイール発電機のエネルギーは、数ミリ秒以内に利用できます。主電源の短時間の変動を補い、非常用発電装置の作動開始までのバッファとして機能します。

ブッシュは、さまざまな用途の回転式エネルギー貯蔵装置向けに真空技術を提供し、そのメンテナンスを行っています。


融合実験のためのハイパワー

フライホイール発電機の優れた性能は、大量のエネルギーが短時間に必要な場面でも利用されています。たとえば、ドイツ、ガルヒングにあるマックスプランク・プラズマ物理学研究所のASDEX Upgrade融合実験がその一例です。ここでは、400トンのフライホイールが1分間に3,000回転まで加速されます。このフライホイールが150MWの電力を10秒間供給し、プラズマを加熱します。

音速の3倍

モータースポーツ用に開発されたカーボンファイバー製のフライホイールは、直径が30ミリメートルで、最高60000回転/分が可能です。つまり、外縁の回転速度は音速の3倍のスピードに達しているということです。フライホイールは、真空の密閉チャンバー内で回転し、磁気カップリングを通して電力が送られます。


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