時速1,000 kmでチューブ内を走行 - 真空を利用した超高速列車

時速1,000 kmでチューブ内を走行 - 真空を利用した超高速列車

地上で音速移動するための唯一の経済的な方法は、真空チューブを使用することです。この「ハイパーループ」のコンセプトを実現する取り組みが、Buschの真空ポンプを利用してオランダのデルフトなどで進行中です。
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未来の交通機関を構築する上で、最もエネルギー効率に優れ、環境にも優しい方法は何でしょうか?現在の輸送は限界に近づきつつあります。あるいは、使用率の上昇に伴って高い環境負荷をかけています。SpaceXの創設者であるイーロン マスク氏は、この問題を解決するためにまったく新しいアプローチを提案しました。それがハイパーループです。これは、電磁誘導の列車が音速で、空気抵抗がほぼゼロの真空チューブ内を通り抜けるというアイデアです。

宙に浮いた状態

マスク氏は、このアイデアを実現するために世界の技術マニアたちの力を借りるべく、 コンテストを開催しました。このコンテストでは、参加者(主に大学や学生のグループ)がこの構想を実現するための技術的なソリューションの開発に取り組みました。オランダのデルフト工科大学のグループもこのコンペに参加し、 2017年には、同グループの車両案がSpaceXハイパーループコンテストの初代チャンピオンに輝きました。その後、このグループが中心となり、デルフトを拠点とするHardtという企業が立ち上げられました。

真空チューブとともに、ハイパーループというアイデアの中核を担うのが摩擦のない電磁誘導作用です。この原理は、すでにリニアモーターカーで使われています。リニアモーターカーは元々はドイツで開発され、現在は中国で実用化されていますが、 デルフトの若きエンジニアたちは、そのアプローチの中でこのコンセプトに重大な改良を加えました。「ポッド」呼ばれる車両を磁力でレール上に浮かせるのではなく、 レールを上に配置してポッドを吊るし、永久磁石の力で所定位置に保持する仕組みになっています。同時に、永久磁石に電磁石が反発することでレールとポッドの間に小さな隙間が生じます。レール内のコイルによるエネルギーを動力にしてポッドが動きます。

試験の成功

これまでに、直径3メートル、長さ30メートルの真空チューブ内でのテストが成功しています。排気にはBuschの真空システムが使われており、 約40分で130立方メートルの空間が1 hPa(mbar)の真空レベルとなります。これは、99.9%の真空に相当します。この施設での試験により、原理としてこの技術が機能しているということが実証されました。

また、ポッド内は航空機の場合と同様に加圧された状態になっています。真空チューブ内には呼吸に必要な酸素が存在しないため、Hardtは航空宇宙産業で利用されている技術を応用して乗客が呼吸するための空気を供給することにしました。早くも今年には3キロメートルのテストトラックの運用が開始され、高速でのポットの試験が可能となる予定です。このテストトラックへの真空供給は、より複雑なものとなりますが、そこでもBuschが供給を担うことになっています。

自転車で時速30 kmの速度で走行しようとすると、時速15 kmの速度で走行するよりも4倍ペダルを漕ぐ必要があります。これは、空気抵抗が速度の二乗に比例するからです。そのため、たとえば1,000馬力のスーパースポーツカーであっても、一般家庭向けの乗用車の最高速度の2倍以上のスピードに達することは不可能です。高速時の膨大な空気抵抗は、車両が空気中のガス分子と衝突し、それらの分子を「脇に押しのける」力に他なりません。真空下では、ガス分子を押しのける必要がないため、抵抗がゼロとなります。また、電磁浮遊式の車両では転がり抵抗も発生しないため、真空チューブ内の推進力のほぼすべてが速度に変換されます。


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