適切な真空技術の選定がもたらす高い経済効果

プラスチック加工の多くの分野でも、真空技術を適切に選ぶことで、大幅なコスト削減が可能です。Röchling Automotive Germany SE & Co. KG(ロシュリング・オートモーティブ社)は、ヴォルフスブルクの自社工場において、ラミネートシステム上に部品を保持するための既存の真空装置を根本的に見直しました。そして、Dr.-Ing. K. Busch GmbH(Busch 社)の協力により、投資額の10倍以上のコスト削減を達成できる新たなソリューションを見出したのです。
図1: 自動車内装ドアパネル部品製造用モールドホルダー(4個)付きラミネートシステム。 天然ポリプロピレン繊維製のモールド部品が、上側の吸引によって所定の位置に固定されており、布製のカバーの上に発泡材の層と接着剤がセットされ、下側に配置されています。
図1: 自動車内装ドアパネル部品製造用モールドホルダー(4個)付きラミネートシステム。 天然ポリプロピレン繊維製のモールド部品が、上側の吸引によって所定の位置に固定されており、布製のカバーの上に発泡材の層と接着剤がセットされ、下側に配置されています。

同工場のメンテナンスおよび修理担当マネージャー、Karsten Pavenstädt (カーステン・パーベンスタット)氏は、2つのラミネートシステムに真空を供給していた既存装置の最適化を試み、最終的に1つのシンプルなソリューションに置き換えることで大幅なコスト削減に成功しました。

この工場では、自動車の内装ドアパネルを製造しています。工場にある2つのラミネートシステムでは、基材に装飾面を貼り付ける作業を行います。まず用意した基材を同システムのホルダー内に下側から配置し、真空を利用して所定の位置に固定します(図1)。一方反対側のモールドに布地または合成皮革のカバーを配置します。この時点で、装飾モールドには発泡材と接着剤の層が装填されています。ラミネートシステム内で部材が加熱され、数秒間貼り合わせることで、成形部品とカバーが接着剤で接合されます。こうして製造された内装用化粧パネルは次工程でドアパネルに組み付けられます。

これまでは、この2つのラミネートシステムの真空生成に4台のイジェクターを使用していました。しかしこのシステムには、2つの重大な欠点がありました。

  1. 部品を所定の位置に固定するのに真空の強さが不十分な場合がある 天然繊維でできた成形部品は、空気の透過性と寸法にばらつきがあります。そのためばらつきによっては真空が強度不足となり、ホルダーに部品を正しく吸引することができず、接合が水平にならない場合がありました。このような場合にはイジェクターからの空気の漏れも吸引されてしまい、イジェクターにさらなる負荷がかかっておりました。 もちろんわずかでも歪みのあるモールド部品は所定の位置に固定できないため、ラミネートすることができず、廃棄物として処分せざるを得ませんでした。
  2. イジェクターに使用する圧縮空気が不足気味で、かつコストを圧迫 4台のイジェクターはそれぞれエネルギー源として大量の圧縮空気を必要とし、予備のコンプレッサーまで使用する必要がありましたが、それでも全体的な圧縮空気の供給不足が頻発していました。2シフトの稼働で消費する圧縮空気の量は、平均で1日当たり1,280立方メートルでした。毎年の生産稼働日が230日、圧縮空気1,000立方メートルあたりのコストを16ユーロとすると、イジェクターの運用に関連する圧縮空気のコストは、年間約4,700ユーロ(1ユーロ=134円換算で約63万円)となります。
     

追加のコンプレッサー購入を検討していたカーステン氏は Busch社に相談し、同社の真空スペシャリストによるコンサルティングを受けることにしました。両社の協力で既存のパラメーターをすべて調査し、適切なソリューションを模索しました。これら調査と分析に基づいた Buschの提案は、周波数制御によるMink MVクロー真空ポンプ1台で2機のラミネートシステムの真空を供給する方法でした。当初カーステン氏は、2.1キロワットのモーターで駆動するこの真空ポンプが、2機のラミネートシステムで計8台使用しているイジェクターの代わりとして十分に機能するかどうか心配でした。


図2:  Simplex VO 0080:周波数制御によるMink MVクロー真空ポンプとバッファタンクを搭載した真空システム。

2017年初めに導入されたSimplex VO真空システム(図2)の主な構成品はMink MVクロー真空ポンプで、バッファタンク上に取付けられました。この真空ポンプの可変速度ドライブと真空チャンバーの圧力スイッチにより、Mink MVは、完全に自立しバッファタンク内の真空レベルを一定に保つことができます。真空システムは2機のラミネートシステムの間に設置され、各マシンの4つのモールドホルダーにホースで接続されています。モールドホルダーの手前にホース接続のバルブがあり、ホルダーに成形部品が置かれるとすぐにそのバルブが開き、部品の接合と接着が終わるとバルブが再度閉じ、ラミネートされた部品を手作業で取りはずせるようになる仕組みです。Mink MVクロー真空ポンプの排気速度は、モールド部品をホルダーにしっかり吸引し所定の位置に固定するのに十分でした。さらに中間にバッファタンクがあることで、必要なレベルの真空が瞬時に生成され、プロセスが大幅にスピードアップされました。

圧縮空気を利用するイジェクターと比較してMinkクロー真空ポンプによる省エネ効果は、実際には想定よりもさらに大きくなりました。これは、部品のすみやかな固定と、モールドホルダー内への正確な配置が可能となったことで、必要とされる排気速度が小さくて済むためです。システムに統合された需要主導型制御により出力が抑えられ、平均の出力はフルパワーのわずか20%程度となりました。結果的にこのエネルギーコストは200ユーロ(1ユーロ=134円換算で約3万円弱)となり、以前に使用していたイジェクターと比べると、合計で年間4,500ユーロ(同約60万円)の省エネに成功しました。 

すべての部品を所定の位置にしっかり固定できるようになったことでラミネート不良による廃棄がほぼゼロになったほか、固定するパーツが歪んでいる場合や空気透過性が高い場合でも、両方のラミネート機の真空性能を必要とされる真空レベルに常時正確に合わせられるようになりました。 

常に一定の真空がバッファされていることが、最大限の経済効果にもつながります。現在はラミネートする部品を2個同時に作業することが可能になりました。もちろんそれらの部品の固定も速やかです。これによりさらに生産量が増加しました。

このソリューションによってコスト削減が実現したほか、最新かつ安全な真空ポンプはほぼメンテナンスが不要で、作動液や潤滑油も不要です。Minkクロー真空技術は、イジェクターと比較し大幅に静音であるため、作業場で発生する騒音も低減されました。もちろん、当初検討していた追加のコンプレッサーに投資する必要もなくなりました。カーステン氏は Busch社との協力を経て導入したこのソリューションに大いに満足しています。


カテゴリー
お問い合わせ
下記までお問い合わせください (Busch 日本):
+81 (0)463 50 4000 連絡先