山椒は小粒でもぴりりと辛い? - エネルギー供給の安定化を支える真空

山椒は小粒でもぴりりと辛い? - エネルギー供給の安定化を支える真空

真空スイッチは、複雑で大規模な送電システムの中で、小さな歯車の一つにすぎません。しかし、このスイッチは、電気エネルギーの安定供給に欠かせない、重要な役割を担っています。
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発電所から消費者へ
コーヒーメーカーのスイッチを入れたり、スマートフォンを充電したり、何気ない私たちの生活を影で支えているのは安定した電力供給です。たとえばドイツでは、長さ180万キロ以上の送電網が、発電所から消費者まで電気を供給しています。送電線には、220,000または380,000ボルトの高圧電力が流れています。 

この電力は通常110,000ボルトに変換され、次により小規模な変電所で50,000~1,000ボルトの中電圧に変換され、最終的には230ボルトという低い電圧になって、都市部および地方の送電線で利用されています。 エネルギー需要の大きい工場や病院、大型のスイミングプールや放送用の電波塔などは、多くのケースで独自の変電所を所有し、中電圧の送電網から直接電力の供給を受けています。送電網の管理では、発電と消費のバランスの確保も行われます。こういった供給と調整には無数のスイッチが使われています。

暗い所で電気スイッチを押すと、一瞬火花が光ったように見えることがあります。このような閃光は、接点が閉じたとき、あるいは接点が離れた直後に生じます。電気によって接点の間の空気がイオン化され、それを通じて接点からある程度離れた所まで電気が流れます。つまりこの小さな閃光は、ごく小さなアーク放電なのです。この物理現象は、自宅の照明のスイッチを切り替えるような場合には無害ですが、高電圧、および最大電圧のスイッチの場合、破壊的な力になる場合があります。アーク放電の温度は、5,000℃を超える場合があります。これは、ほとんどの物質を一瞬で燃やせる温度です。

真空がアーク放電を防ぐ

アーク放電で接点が焼けてしまうと、接続されている送電網全体の機能を危機にさらす状況に陥ります。他にも、火花が変電所内の他のスイッチや高電圧装置を損傷する恐れもあります。このような危険を回避するために、高電圧スイッチは製造の段階で内部の空気が抜かれています。スイッチの接点は真空遮断器に覆われています。真空内にはイオン化する気体分子が存在しないため、アーク放電を誘発する危険性がありません。

ただし、高圧電流下では接点からわずかな量の金属が蒸発するため、小さなアーク放電が発生する可能性は依然としてあります。そこで接点の特殊形状(中空円筒状で周囲にスリットを形成)と材質により、これらのアーク放電でもごく小さな熱しか発生しないような仕組みを採用しています。加えて、その熱も真空で隔離され、事故を引き起こすことはありません。このように、スイッチの接点まわりを真空にすることは、送電網の安定性に欠かせません。


発電所における事故や故障は、最も典型的な停電の原因です。しかし、1つの発電施設に不具合が生じても、通常は他の発電所がより多くの量の電気を提供して、影響を短時間に留めます。数秒間の停電の原因としては、中電圧送電網の一部である鉄塔への落雷も考えられます。エネルギーの専門家が言う「停電」とは、送電網の広い範囲で数分間、あるいは数時間にわたって送電が停止する場合です。このような場合、電気の供給は完全にストップしています。その原因となりうるものとしては、倒木による重要な送電線の切断や、ショートが挙げられます。冬期の荒天も、重大な影響を及ぼす可能性があります。寒い時期が長く続いたあとの融雪や突然の雨により、送電線に厚い氷の層が付着した場合、その重みで送電線が破損し、送電に支障を来す場合があります。場合によっては、影響を受けた鉄塔が倒れることもあります。最悪の場合は、ドミノ倒しのように複数の鉄塔が倒れることも考えられます。しかし、これまでに発生した大規模停電の記録を見てみると、そのほとんどが、送電網そのものに起因しているということが分かります。つまり、電圧の過剰な変動や過負荷、あるいは送電網の重要な部品の技術的誤作動が原因となっています。

ヨーロッパには、SAIDI(システム・アベレージ・インタラプション・デュレイション・インデックス)と呼ばれる指数があります。これは、顧客の停電時間合計を顧客数で割った、年間の停電時間を示す値です。2013年の最も低いSAIDI値はルクセンブルクの10分で、その後にデンマーク、スイス、ドイツが続きました。 こういった国々のエネルギー供給網でも、もちろん真空が活躍しています。


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