淡白ではない、濃厚な味わい - 真空でノンアルコールビールの風味を豊かに

淡白ではない、濃厚な味わい - 真空でノンアルコールビールの風味を豊かに

アルコールは風味を運ぶ媒体です。ビールからアルコールが抜けると、風味も変わってしまいます。ノンアルコールビールの評判が長らく芳しくなかった理由はここにあります。ところが最近では、苦みをキープするために使用される真空蒸留などの技術が登場し、ノンアルコールビールを楽しむ人が増えてきました。
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歴史家の間では、ビールの醸造方法を初めて発見したのが中国人かシュメール人かという議論がまだ続いていますが、ビール好きの人々にとっては、このような論争よりも風味豊かなノンアルコールビールは造れないのかという願いのほうが重要でした。基本的に、ビール製造に使用されるプロセスは、昔からほとんど変わっていません。しかし、最近のノンアルコールビール需要の高まりにより、ビールメーカーは真空を利用する新たな方法を開発したのです。 

アルコールなしでうま味を実現

ビールの醸造は、基本的には非常にシンプルです。水と発芽した穀物、つまり麦芽を加熱すると、 穀物のデンプン質が糖に変わります。その後、これをホップとイースト菌で発酵させます。こうして比較的短時間で、アルコール含有量が3.5~5%のビールができあがります。もちろん、本当に美味しいビールを造るにはもっと多くの工程がありますが、詳細はここでは割愛します。

ノンアルコールビールも、少なくとも最初のうちは、同じ方法で醸造されていました。しかし、アルコール分を除去すると、たちまちビールの風味が損なわれてしまいます。このためノンアルコールビールは長い間、気が抜けていて味気ないと思われ、好んで飲む人はあまりいませんでした。ビールメーカーは、このジレンマを解消するための方法を考案し続けてきました。現在一般に使用されている方法の1つが、発酵タンク内のアルコール濃度が0.5%に達した時点で、コールドショックにより発酵の進行を止めるというものです。この程度の量が残っていれば、ビールらしい味わいを十分に保つことができます。たとえばドイツでは、度数0.5%までのビールをノンアルコールビールとして販売することが認められています。

風味を保ちながらアルコール含有量を減らす方法としては、他にも人工透析で用いる技術を使った逆浸透法などがあります。この製法では、ビールを加圧して半透膜で分離します。小さなアルコール分子はこれらの膜を通過することができますが、風味を運ぶ、より大きな分子は膜を通過できません。ここでプロセスを効率化するために、膜の反対側で真空ポンプが利用されています。

真空で緩やかにアルコールを除去

美味しいノンアルコールビールは、真空蒸留によっても作ることができます。このプロセスでは一般の蒸留プロセス同様に、発酵が終了した製品を蒸留しますが、 ここでカギとなるのは、蒸留を真空下で行うという点にあります。真空にすることで、含まれているアルコールの沸点が下がります。例えばエタノールは大気圧での沸点が78度ですが、圧力を下げると35度程度で沸騰させることができます。ある程度の風味を含むこのアルコール蒸気を、その後再び濃縮して蒸留することで、風味を分離することができます。これをノンアルコールビールに戻して添加すれば、 ホップならではの風味を損なわない、混じりけのない味わいの飲料ができあがります。


ノンアルコールビールに含まれる小量の残留アルコールが人体に及ぼす影響については、さまざまな研究で調査されてきました。あるヨーロッパの研究では、ノンアルコールビールを15~20本飲むと、通常のビール1本を飲んだときの血中アルコール濃度に達すると報告されています。

ドイツ・フライブルク大学のInstitute of Forensic Medicineでは、現実的な飲酒状況では、ノンアルコールビールを速いピッチで摂取しても血中アルコール濃度の上昇には影響しないとも報告されています。その報告によると、1時間で1.5リットルのノンアルコールビールを摂取した78名の被験者において、血中濃度の最大値は5.6ppmでした。この研究の執筆者のまとめによると、この状態では摂取者の思考や判断能力に影響がでるとは考えにくいとのことですが、個人差もありますので摂取後のマナーには十分注意したいものです。

ちなみに、フルーツジュースに含まれる天然のアルコール含有量も約0.5%です。ケフィアにはさらに多くのアルコールが含まれています。


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