世界で愛されるチーズ - 真空が生み出すチェダー独特の食感

世界で愛されるチーズ - 真空が生み出すチェダー独特の食感

イングランド南部発祥のこのチーズは、何世紀も前からグルメたちを楽しませ、 今では世界で最も人気のあるチーズの1つです。現在の製造システムでは、一貫した品質の確保に真空ポンプが役立っています。
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約800年前、イギリス南西部にあるチェダーという村の農民がチーズを作り始め、チェダー渓谷の洞窟に貯蔵していました。洞窟内でチーズは独特の風味を持つようになりました。英国の王室もこのチーズの愛好家です。1170年、ヘンリー2世は4トン以上のチェダーチーズを注文しました。チャールズ1世(1625~1649年)は、製造されたチェダーチーズをすべて王室へ納入するよう命令しました。

世界的な普及

200年後、酪農家のJoseph Hardingによって製造工程が改良されました。Joseph Hardingはスコットランドや北米の仲間たちにも指導し、さらにその息子は技術を携え遥かオーストラリアまで渡りました。今ではチェダーチーズは、世界各所で製造され、消費されています。口当たりのよい風味が貯蔵中に深みを増していくことが、このチーズの人気の一因となっています。1~3か月の熟成後の若いチェダーチーズは、ややクリーミーでわずかな酸味を持ちます。15か月以上熟成が進んだチェダーチーズには、舌にぴりっとくるナッツのような風味があります。ちなみに、一部のチェダーチーズに見られる濃いオレンジ色はベニノキの種から作られる伝統的な着色料(無味)であるアナトー、またはカロテンの添加によるものです。

このチーズ特有の、濃密な食感は、チェダリングと呼ばれる工程によって生み出されています。従来、この工程には、レンネットで増粘した牛乳を他の種類のチーズよりも小さい小片にカットし(これをカードと呼びます)、 カードを型に入れてホエイと呼ばれる水分を抜いて固める作業が含まれます。その後、チーズをブロック状にカットして重ねていくことで、より多くのホエイが抜けるようにします。最後に、その塊を小分けにして塩を混ぜ、型に押し入れて貯蔵庫で熟成させます。

真空を利用した完璧な食感

現代の製造工場では、チェダリング工程は完全に自動化されており、そこで真空が使用されています。塩を加えたカードが、吸引ライン(クロー真空ポンプによる駆動が一般的)を通って、ブロック成形タワーの一番上に運ばれます。この高さは、最大で10メートルになることもあります。これらのタワーは、100 hPa(mbar)までの真空を生成できる真空ポンプにも接続されています。カードはタワーに投入されると自重によって小さくなっていきますが、ある程度小さくなった後は真空の出番となります。真空により、圧縮工程中で発生する可能性のある空洞と、残りのホエイが除去されます。真空レベルを正確にコントロールすると、チーズは均一な濃度でタワー底部のブロックチャンバーに到達します。その後、完成したブロックがチャンバーから取り出されます。

ハードチーズ(チェダーチーズ、グリュイエールチーズ、パルメザンチーズなど)だけでなくソフトチーズ(ブリーチーズ、カマンベールチーズなど)も長期間熟成する必要があります。微生物がチーズの中で作用し始めなければ、豊かな風味は生まれません。乳酸菌のような微生物は、チーズ用乳の早い段階で添加されます。湿度と温度が適切であれば、成熟過程でこれらの微生物が活性化され、酸を形成します。これによってタンパク質と乳糖がチーズ特有の風味に変化します。同時に、チーズから水分が抜けて風味がさらに濃厚になります。チーズの成熟期間が長ければ長いほど、チーズの風味が強くなります。

また、エメンタールチーズやマースダムチーズにできる穴も微生物の作用によるものです。微生物による発酵プロセスで二酸化炭素が発生しますが、 二酸化炭素はチーズの外側の固い皮の部分を抜けることができないため、チーズに空洞が生じます。これらの空洞の大きさは、熟成時の温度によって異なります。13℃未満であれば空洞は小さいか、まったく生成されません。温度が上がれば、空洞は大きくなります。


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