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ロータリーベーン真空ポンプをバックポンプとしてメカニカルブースターポンプと組み合わせた真空包装システム

図1:ロータリーベーン真空ポンプをバックポンプとしてメカニカルブースターポンプと組み合わせた真空システム。出典:Busch Vacuum Solutions.

食品包装におけるコスト効率に優れた真空テクノロジー:パート1

真空生成の基礎

今日の製造業の基本は、限りなく環境に優しく、限りなくコストを抑えた運用に徹することです。

コスト効率と環境面のバランスをとる上では、エネルギー消費が常に重要な役割を果たします。これは特に、エネルギー管理に関するISO 50001認証が計画または要求される場合に顕著となります。
運用されるシステムのエネルギー効率が高いほど、作業も効率的に進みます。

近年、食品加工および真空包装プロセスにおける真空テクノロジーの利用は益々増えており、そのエネルギー効率が製造業の全体的なエネルギーバランスに影響を及ぼすようになってきています。

本記事は2部構成となっており、まず真空供給の基礎、続いて真空システムにおける省エネの可能性についてご紹介します。
第1部では真空生成の基礎について取り上げ、
第2部ではチャンバー式包装、深絞り包装、およびトレーシーラー包装機を使用した食品包装における真空テクノロジーの応用について取り上げます。

真空を利用した効率的なエネルギー管理

優れたエネルギー管理には、設計や導入作業も含めた計画が必須です。真空アプリケーションにおいては、その生成と利用の両面から検討する必要があります。装置の進化により、環境保護だけでなく資源や工数、コストの削減にも貢献できる方法が開発されてきました。一方、個々の装置のエネルギー消費量にのみ着目するのは得策ではありません。全体の効率性に影響を及ぼすさまざまな要素を包括的に見ることによってはじめて、相乗効果などシステムへの影響が明らかになります。

影響を及ぼす要因:
  • 設計および設置の諸経費
  • 耐用年数
  • 稼働時間
  • 運用およびトレーニングの諸経費
  • メーカー/サプライヤーからのサポート
  • 拡張性
  • ダウンタイムも含めたサービス関連の諸経費
  • 作動流体
  • 廃棄

ライフサイクルコストは、これらの要因の合計となります(総所有コスト)。

真空

概して、「真空」とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間を意味します(図2)。圧力と真空領域の高低は、一見矛盾するかのように感じやすいのですが、圧力が低いほど、真空度は高いと表現されます。
真空ポンプの選定に重要な3つのパラメーターがあります。もちろんこれらは、既存のシステムの評価にも使えます:
  • 到達真空度 [hPa(mbar)]
  • 排気速度 [m3/h]
  • 定格モーター出力 [kW]

到達真空度 [hPa(mbar)]

到達真空度とは、その真空ポンプが達成できる最も低い圧力、つまり最も高い真空レベルを指します。到達真空度に達すると、排気速度はゼロまで低下します(図3)。到達真空度を表す単位は一般的にヘクトパスカル [hPa] が使われます。これは日本では計量法などにより、国際的なSI組立単位であるパスカル [Pa] またはヘクトパスカル [hPa] を原則として使用することが義務付けられているためです。

排気速度 [m3/h]

真空ポンプの設計排気速度は、大気圧下でそのポンプがどれだけ多くの空気または気体を一定時間内に排気できるかを示します。立方メートル毎時 [m3/h] が排気速度の一般的な単位です。実際の排気速度は、圧力の低下に伴って低下します(図3)。

圧力曲線は、排気速度曲線によって示されます。これは、大気圧から到達真空度までのすべての圧力範囲における実際の排気速度を示すものです。この排気速度曲線の例では、包装で5 hPa(mbar)の負圧が想定される場合の排気速度は、この真空ポンプは本来の排気速度の75%に留まるということが分かります。この曲線は、排気時間、つまり真空包装の包装サイクルの長さにも影響します。このため、設計時には、どのサイズの真空ポンプを使うのが合理的か、正確に判断する必要があります

こういった検討の結果、包装プロセスにおいて望ましいチャンバーのサイズとサイクルタイム、真空を実現できるようになります。この点に関する詳細は、「真空供給の設計」を参照してください。

定格モーター出力 [kW]

定格モーター出力とは、定格の電圧および電流でモーターシャフトに伝達される出力をキロワット [kW] で示したものです。定格モーター出力は最大値ですが、実際には常時この出力となる訳ではありません。実際に使われた電気エネルギーは、シャフトに伝えられた出力とモーターの効率から計算されます(図4)。
定格モーター出力をサービスファクター(S.F.)と合わせて表示しているモーターメーカーや真空ポンプメーカーもあります。実際の最大モーター出力は、定格モーター出力にサービスファクターを掛けて算出されます。このため、これは、単独で提示されるkWの値よりも大きくなります。

サービスファクター(S.F.)は、アメリカ電機工業協会(NEMA)がNEMA MG1-2011マニュアルにおいて規格として定義したものです。これは、銘板に乗数として表示され、定格モーター出力を超えてどの程度の負荷をかけることができるかを示します。これは、定格モーター出力にS.F.値を掛けて算出します。定格モーター出力が15.0 kWでS.F.が1.25の場合、15×1.25 = 18.75 kWとなります。

したがって、実際の最大定格出力値は、「定格モーター出力値」より25%大きくなります。

真空供給の設計

真空供給は通常、包装機のメーカーが、包装における経験値から設計します。包装数、チャンバー容積、サイクルタイムなどを加味し、最大限の性能が発揮できるように調整されます。ただしそうすると、最大キャパシティーで運転しない場合に真空ポンプのサイズが過剰となり、必要以上のエネルギーが消費されることも起こり得ます。

実際には必要とされる排気速度の最大値に対して、複数台の真空ポンプで設計することは可能ですし、その方が合理的であることも多いのです。同じ包装機で、異なる製品を異なるタイミングで包装することは珍しくありません。
小さめの真空ポンプを2、3台並列で運転するシステムのほうが、多くの場合で得策です。
サイズ、包装容量およびサイクルタイムが大きく変動する可能性もあるでしょう。このようなケースでは、小さめの真空ポンプを2、3台並列で運転するシステムのほうが、多くの場合で得策です。排気速度の需要に合わせ必要な台数だけを稼働させる、という方法で真空ポンプを制御することができます。サイクルタイムの短縮には、大型真空ポンプ1台よりも多段式の真空システムを採用するほうが効率的な場合もあります。

また、効率の高い真空生成方法の1つとして、ロータリーベーン真空ポンプとメカニカルブースターポンプを組み合わせる方法もあります(図5)。メカニカルブースターポンプによってロータリーベーン真空ポンプの性能が大きく上昇します。真空ポンプ単体だと非常に大型で消費電力も高いポンプが必要となるケースでも、ロータリーベーン真空ポンプ(バックポンプ)とメカニカルブースターポンプを適切に組み合わせることで排気性能は著しく上昇し、高い排気速度を達成できるようになります(図5)。結果として、サイクルタイムの短縮と大幅な省エネが達成されます。

まとめ

消費電力データは、真空ポンプを選定する際に非常に重要な情報です。さらに、真空ポンプのサイズを実際の要件に適合させる必要もあります。包装容量の変動に対処するため、複数の真空ポンプを組み合わせて運用する可能性も検討に含めなければなりません。最善なのは各種真空機器を幅広く取り扱っている、知識と経験の豊富な真空のスペシャリストに相談することだと言えるでしょう。

パート2:真空システムにおける省エネの可能性

パート2では、「食品包装におけるコスト効率に優れた真空テクノロジー」の後半として、真空システムにおけるさらなる省エネの可能性について取り上げます。

パート2